5 ページ7
.
「…ゲイ、やったんや」
「いや、なわけ」
「っは?!」
「僕ゲイちゃいますから」
「だって、さっき、あの人に…」
「嘘、逃げるための」
背中が見えなくなるまで、二人無言でその場から動かずに固まっていた。
そこで、ふと気になったことを口にしたが、さっきまで味方をしてあげてた自分をぶん殴ってやりたい気持ちになった。やっぱりこいつは感じが悪い。極めて感じが悪い。
怒りを通り越し呆れていると、こいつはぎゅっと絡めていた腕を外してこちらに向き直る。
「さっきは話合わせてくれてありがとうございました」
「…あぁ、はい」
「じゃあ」
そそくさと俺の目の前から消えようとした神山の腕を掴む。
怪訝そうな表情を1ミリも隠そうとしないこいつは、悪魔か何かの生まれ変わりなのか。
「なんかないん」
「え?」
「お礼、なんかしてや」
「…自分からお礼って、ありえへんわ」
正直自分でもこの不思議な状況が、とても居心地が悪い。しかしあのまま帰すのは気に入らなかった。それに今日は朝から何も口にしていなくて、普通に腹がへっていたから。
近くの居酒屋に入って、目の前のおでんから上る湯気越しに神山を見つめる。
小さなひと口でぱくぱくと食べ続ける神山は、現場とは全然雰囲気が違った。
いつもの長過ぎる前髪は横に流されていてちゃんと目が見える。汚いツナギではなく、割とお洒落に気を使っているような格好で。
「…なんですか」
「え?」
「さっきからジロジロ、食べずらいねんけど」
「あぁ、…ごめん」
軽く睨まれて、俺も箸を持って食べ始めた。冷えた体に熱い料理は染みるな。その上奢られる飯ほど上手い料理は無い。
「理由、聞かないんすね」
「いや、普通聞かれへんやろ」
「…あの人は元カノのお兄さんなんです。高校まで付き合うてた彼女の」
「ふーん、なんで追いかけ回されてたん?」
「彼女、めっちゃお嬢様で。僕はめちゃくちゃ貧乏で。…好きちゃうかったけど、金貰えるから付き合うてた。でも高校出て働ける歳になったから別れてんけど、彼女がなかなか」
「でもそのまま付き合うてたら、派遣なんてせんでもええのに」
「……人の金って、使えば使うほど自分の中で負担になんねん」
その一言で、なんも言えんくなった。
奢ってもらって喜んでる俺に対して、目の前のこいつは10歳も歳上の人みたいに大人な事言うてて。一瞬、は?て思ったけど。
その瞳に、光は無かった。
.
339人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くすみピンク(プロフ) - ウルフさん» コメントありがとうございます!!しょりそう大好きです!!行き過ぎて小説アップしたので、ぜひ見てみて下さい(*´艸`) (2018年5月3日 22時) (レス) id: 95e4c10c3b (このIDを非表示/違反報告)
ウルフ(プロフ) - しょりそう好きなんですか!?私もです!やっぱり勝利くんは攻めじゃないと・・・((殴 (2018年4月3日 17時) (レス) id: c751a453ea (このIDを非表示/違反報告)
くすみピンク(プロフ) - ペンギンさん» 以前から読んでくださっていたんですね(T_T) ありがとうございます!!これからもよろしくお願いします!更新楽しみにしていてください(´∀`) (2018年1月26日 13時) (レス) id: 95e4c10c3b (このIDを非表示/違反報告)
くすみピンク(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!待っていてくださった方がいること、本当に本当に嬉しいです(T_T) またお話の件ありがとうございます!抜けてました(汗) 今後も何かミスがあったら教えていただけると嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2018年1月26日 12時) (レス) id: 95e4c10c3b (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン(プロフ) - こんばんは!再開ありがとうございます!また作者様の作品を読むことが出来、本当に嬉しいです♪りゅかみちゃんがこれからどうなっていくのか楽しみで仕方ありません!これからも更新頑張って下さい♪ずっと応援しています! (2018年1月25日 3時) (レス) id: c34058457d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くすみピンク | 作成日時:2018年1月11日 13時