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「大丈夫すか、腰」
「うん、大丈夫」
「無理すると、明日動けんくなりますよ」
「はは、お前に心配される筋合いないわ」
無心で土を運ぶ。
この季節は本当に良い季節だ。
命懸けの夏の工事現場に比べて、働きやすい良い季節。
長年この仕事を続ける田宮さんは、ずっと腰痛を抱えている。
この前だって資材を持ち上げた拍子に尻餅をついて倒れ込んでいた。
それでもこの仕事を辞められない理由があるからこれを続けているわけで。
「てか、今日渋谷さんいませんね」
「あぁ、今日はオンナと会うって張り切っとったなぁ」
「はは、さすがですね」
工事現場の派遣にも、馴染みの顔がある。
50前、バツイチで名古屋出身の田宮さん。
30過ぎ、副業でバンドしてる女好きの渋谷さん。
そして24、ただのフリーターの俺。
なんとなくいつも一緒にいて、楽しい人達。
毎日、辛い仕事の繰り返し、でもその中に楽しい時間があるから救われてると思ってる。
昼休憩に弁当を頬張る。
さっきまでは物凄く楽しみにしていた昼飯、しかしいざ目の前に来るといつもと同じおかずに肩を落とす。
食後の時間は決まって煙草を吸う。いつもなら渋谷さんが「流星、火」て言うて、俺が火貸してあげるのが日常。
「てか前から気になってたんですけど、あの、あそこで一人でいる子。あの子中卒とかですかね」
「ん?」
「まだ16,17とかなんかなぁって」
「何言っとんの、ここ未成年働けへんし」
「そうなんすか?!」
「相変わらずお前はお前やな」
白い煙を口から吐き出しながら、ふははと笑う。田宮さん、禁煙するて言うてるのに。
なんとなく出来上がる仲良しグループのようなものの、どこにも属していない子を見つけたのは1週間程前のこと。
仕事中の会話も無ければ、昼飯や休憩においても常に一人で。
それが逆に目立つ。
低めの背、伸びた前髪、真っ黒な髪。
声も聞いたことが無ければ、正面から見たことも無い、誰も彼の名前を呼ばないから名前すら知らない。
「話しかけてきたらいいやん」
「ええー、なんか怖そう」
「さっきまで中坊って馬鹿にしとったのに?」
「ちょっと、人聞き悪いこと言うんやめてくださいよ」
「金髪がなにビビっとんの」
「…っ、は、話しかけてきます!」
田宮さんに呆れたように笑われ、少しムキになって立ち上がった。
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くすみピンク(プロフ) - ウルフさん» コメントありがとうございます!!しょりそう大好きです!!行き過ぎて小説アップしたので、ぜひ見てみて下さい(*´艸`) (2018年5月3日 22時) (レス) id: 95e4c10c3b (このIDを非表示/違反報告)
ウルフ(プロフ) - しょりそう好きなんですか!?私もです!やっぱり勝利くんは攻めじゃないと・・・((殴 (2018年4月3日 17時) (レス) id: c751a453ea (このIDを非表示/違反報告)
くすみピンク(プロフ) - ペンギンさん» 以前から読んでくださっていたんですね(T_T) ありがとうございます!!これからもよろしくお願いします!更新楽しみにしていてください(´∀`) (2018年1月26日 13時) (レス) id: 95e4c10c3b (このIDを非表示/違反報告)
くすみピンク(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!待っていてくださった方がいること、本当に本当に嬉しいです(T_T) またお話の件ありがとうございます!抜けてました(汗) 今後も何かミスがあったら教えていただけると嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2018年1月26日 12時) (レス) id: 95e4c10c3b (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン(プロフ) - こんばんは!再開ありがとうございます!また作者様の作品を読むことが出来、本当に嬉しいです♪りゅかみちゃんがこれからどうなっていくのか楽しみで仕方ありません!これからも更新頑張って下さい♪ずっと応援しています! (2018年1月25日 3時) (レス) id: c34058457d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くすみピンク | 作成日時:2018年1月11日 13時