security boy 2【小瀧望】

． ページ28

「待って意味わからん」


「意味も何もそのままだ


とりあえずお前からの話を聞いて矛盾がないか確認する」


気になる言葉を残して正面の男は俺に身体を向けた
抗議の目を向けてもどうやら俺が話をするのが先のようだ


「…あとで続き聞かせてください」


ため息混じりで言葉を紡ぐと男は口角を上げて
力強く頷いた









　








　






ーーー


この世界に入ったきっかけは神ちゃん


中学からの友達で
ずっと昔から一緒にいるんじゃないかと
錯覚するくらい仲が良かった


高校は別になって俺は勉強に追われて
神ちゃんと連絡を取る機会は少なくなった









“神山くん…失踪したらしいよ”


同じ中学だった人同士が俺の近くで
小声で話す噂に反応せずにはいられなかった


“その話…詳しく聞かせて！！！”


ちょうど神ちゃんの誕生日


ちょうどおめでとうと連絡しようと思っていた日だった









噂は噂


学校終わって部活に顔を出さず
飛び出して向かった先はもちろん神ちゃんの家で


どんないい想像をしてインターホンを鳴らしても
現実はやつれたお母さんが顔を出すだけだった


探せば探すほど
調べれば調べるほど


神ちゃんが消えたことの現実が重くのしかかって


心に空いた穴を塞ぐように
神ちゃんのいない寂しさを埋めるように


学校以外の時間で神ちゃんを探し回る日々を送った









　







そうして


“神ちゃん…？”


ついに幻覚が見え始めたのか


ろくに寝ていないせいもあるのか


公園の隅で丸っこくなっているものでさえ神ちゃんに見えるようになった


何度神ちゃんと呼んでも今までは間違いで終わっていた


のに


“……しげ？”


その物体はか細い声で俺の名前を確かに呼んだ

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