security boy【小瀧望】

take care of me ページ26

「…うーん」


頭が痛かったのは昨日の夜からで
片頭痛かと思って放っておいたけど


少し熱っぽいかもと思ったのは家を出てから


…夜冷えるのに乾かすの遅かったからかな









「ちょ…大丈夫？藤井さん…」


「顔色悪いよ…今日帰ったら？」


午後になって周囲の社員さんに
体調が悪いのがバレるくらい
悪化したそうだ


迷惑かけるし早退しよう


「すみません…早退します」


今日金曜日だし…仕事持ち帰って
土日終わらせよう









「…ただいま」


なんとか電車で帰ってきたけど
部屋に人の気配はない


そうだよね
望だって流石に外出るよね


少し前に軟禁してると思い込んだ自分を嘲笑った


ベッドに置いてあるスウェットに着替えて
そのままベッドに一人横になった


前まで一人だったのに
風邪を引くとどうやら寂しくなるようだった









望「ただ……あれ、A


早ない！？どしたん？」


玄関から望の声と足音が聞こえて飛び起きた


望「熱あるん？」


おでこの冷えピタを見て状況を察したらしく
眉を下げて私を見つめてきた


望「ごめんなぁ、気付かんくて…


おかゆさんなら食べれる？うどんにする？」


「……おかゆがいい」


望「わかった、寝とき」


頭に手を乗せてキッチンの方に行ってしまった









流れるようにスーツを脱ぐ望を初めて見た


キチッとセットした髪の毛


ビシッと着こなしたスーツ


スーツからの甘い香水の香り


タバコの混じった匂い







そっか


望がいつも白いTシャツなのは
帰ってきて着替えているから
部屋着として使っているから









私の知らない望がたくさんいて
小さな違和感に
こみ上げてくる熱いものに
気付かないフリをした








．

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