赤 × 青 (青 × 赤) ページ1
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( 赤 )
「 ...... っ、はぁ、っ、 」
都会に聳え立つマンションの屋上。
高い柵を超えて立ち入り禁止の場所の先には、
真下へと続く真っ暗な闇への入口。
...... このまま、飛び降りてしまおうか、
軽い気持ちだった。
つらくて、苦しくて、
もう、この世界から逃げ出したかった。
ずっと前から、考えてたけど、
決意ができひんまま、ここまで来てしまった。
やっぱり、帰ろうかな、どうしよう ...
柵から離れんようにぎゅっと掴んで、
そう思ってたとき。
『 ......... っ、 』
人の気配がして、後ろを振り返ると、
拳をぎゅっと強く握って、立ち尽くす男の人。
1歩も近づいて来なかった。
ただ、こっちを見つめて、何かをぐっと堪えてた。
「 ....... っ、俺、帰らな、夕飯まだやった、 」
今日は諦めよう。また来ればいい。
そんなこと考えて、
最初から、飛び降りる勇気なんかなかったくせに俺。
適当に言葉を並べて、
その場から逃げようとしたとき。
『 ......... 俺も、飛び降りようかなぁ、っ、 』
「 ...... っは、？ 」
すれ違いざまに、聞き捨てならない言葉が。
嘘やろこの人。
普通、止めるもんちゃうん、こういう時って。
でも、苦しい表情をしとる彼は、
ほんまに飛び降りてしまいそうな勢いやった。
『 ...... 冗談です、へへっ、 』
「 ......... っ、 」
ふにゃっと笑う優しい顔の奥に、
隠されとる何かがあるんやないかと思った。
『 ...... ひとりやないですよ、きっと、 』
パジャマにサンダルに、ボサボサな髪。
楽な格好をしたその人は、
きらきらと光るネックレスを
ぎゅっと握りしめて、一点を見つめていた。
俺より先に、消えてしまうんやないかって、
そう思うくらい、ほんまに儚い人やった。
軽く礼をして、離れようとすると
あ、って呼び止められる。
『 俺、藤井です、18号室に住んでます 』
「 ... ぇっと、26号室の、重岡です、 」
『 ... じゃ、またいつか 』
「 ...... はい、っ、 」
不思議な時間やった。
...... また、彼と話してみたい、って思った。
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作者名：aoi | 作成日時：2023年10月8日 22時
