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その夜、和也の母に夕飯をご馳走になると、城まで歩いて戻った。
母親に暗いから馬を出すと言われたが、そんな迷惑かけるわけにはいかない。
智と和也はお互い黙ったまま、静かに夜道を歩いた。
｢…父ちゃん、ただいま｣
そっと王室のカーテンから父親を覗き込む。
王は何か考え事をしていた。
心配かけたよなぁ…。
｢父ちゃん…？｣
｢智、入りなさい｣
｢はい｣
重い足取りで部屋へ足を踏み入れる。
城に帰った途端、智と和也は松岡に散々怒鳴られた。
真っ先に和也の家に向かったものの、母親にいないと言われたそう。
恐らく２人が駆け落ちでもしたのだと思ったのだろう。
それが吉と出たのかは、自分たちもよくわからない。
でも、今回は殴られなかった。
和也だけが悪いわけではないと。
松岡はどこか様子が変だった。
和也を他の王子の元に寄越し、智には王室に行くよう促した。
そして今、部屋に来てみたものの、王は何も言わず何やら顎に手を当てて考えたまま。
｢父ちゃん？｣
智が聞くと、耳を疑うような言葉が帰ってきた。
｢智、お前に伝えなければいけないことがある｣
｢何？｣
一息ついて、王は言った。
｢結婚しなさい｣
｢はっ？｣
｢だから、今すぐ結婚しなさい｣
｢え？？｣
｢南の島の王子と結婚をしなさいと言ってるんだ｣
｢…はっ！？｣
智にとって、最大のピンチが訪れようとしていた。
つづく
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作者名：京
| 作成日時：2020年4月12日 22時
