heroine① (ページ30)

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｢ん…｣

目を開けると、部屋は暗く窓からは月明りが照らされていた。

和也は天井を見上げると、そこが自分の部屋で、今ベッドに横たわっているのだと確信した。

多分、母親が風邪を引かないよう暖かいベッドで寝かせてくれたのだろう。

安心して寝返りをうつと、目の前には幼い寝顔のドアップ。

｢びっくりした…｣

そうか、こいつのせいで昼寝なんかしちゃったんだっけ。

肩からずり下がっている毛布を直してやる。

｢ぅ、ん…｣

すると、智は甘えるように和也の胸に擦り寄った。

ドキドキ…

心臓の音だけが部屋に響く。

何だよ、何なんだよ。

さっきといい、今といい、なんでこんなに甘え上手なんだ？

お姫様だから、いつも誰かと一緒に寝たりしてんのかな。

だとしたら、誰…？

王様はお忙しいし、王女様は違う街にいる。

てことは、怪しいのはあの松岡って付き人だ。

妙に智に優しいし、甘いし、ベッドで一緒に寝るのだってありえなくない。

むしろ、もう他の王子に食われたとか？翔くんとは幼なじみだし、潤くんと朝帰りしたし、バカ雅紀とは…まあないか。

｢…………｣

考えてたら、だんだんムカついてきた。

何で、どうして他のやつとそんなことできるんだよ。

将来誰か１人に絞らなきゃいけないのに。
みんなと仲良くなんて、そんなの…残酷じゃないのか？

胸のもやもやが取れずにいると、ふと智の着ていたシャツのボタンが１つ開いていることに気付く。

恐らく寝ている間に服が乱れてしまったのだろう。

俺はそっと、ボタンに手を伸ばした。