heroine① (ページ26)

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｢はぁ…よかった、無事で｣

｢カズどうしたの？家は？｣

｢あんたが心配で戻ってきた｣

｢へ？｣

｢なーんてね。おいで｣

手を握り智の体を起こすと、自分の家へと案内する。

｢あら、また戻ってきた｣

｢お袋、火は大丈夫？｣

｢うん、今お父ちゃんと近所の人たちが頑張ってくれてる｣

野菜を洗いながら先ほど帰ってきた息子をちらりと目で伺う。

一度また米に顔を戻したが、和也の隣にいる人物に気付く。

｢あら、どうしたのその女の子！｣

妙に小綺麗な格好。

この辺では見かけない顔だ。

｢こいつ女じゃないよ、男｣

｢え、あらやだ！ごめんなさい！とってもかわいいから…｣

｢智です、初めまして｣

口に手を当てる和也の母親に、丁寧にお辞儀する。

その瞬間、母親は顔をしかめた。

｢智…って、まさか智姫様！？｣

｢そうだけど｣

なんてことないという素振りで答える。

｢まあ！！これは失礼いたしました！何分田舎者でございまして、本当に申し訳ございません！｣

水を切り手を拭くと、急いで智姫の前に跪く。

｢あ、えっと、そんな…｣

智は慌てて母親を起こしにかかる。

｢和也、あんたなんでお姫様が来ること言わなかったの！？｣

｢言う暇なんかねぇよ！俺たちはな、村が襲撃されたって聞いて…急いで飛んできたんだぞ！｣

村を見渡せばバケツリレーで火を消しとめようと農家の人たちが集まっている。