heroine① (ページ25)

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｢なんだこいつ、こんなとこで｣

ぐいっ、と腕を引き上げびくびくと震える智を立たせる。

｢農民は全員逃げたと思ってたけど。おい、どうする？｣

｢どうするったって、人間に危害は加えるなって言われてるし｣

捕らえられた智を見つめる兵士たち。

｢離して！行かせて！｣

｢智！！｣

｢カズ、俺はいいから、先に行って！！早く！｣

戸惑う和也に今まで出したことがないような、大きな声で叫ぶ。

和也はぐっ、と拳を握り小屋に向かった。

｢おい、こいつひょっとしてお姫様じゃ…ぐっ！！！｣

後ろから羽交い締めしていた兵士の首を肘打ちして、手から逃れる。

｢ゴホッ…何しやがる！｣

やり返そうと腕を振り上げるが、もう一人の仲間がそれを阻止した。

｢やめろ。まだガキだ。逃がしてやれ｣

｢でも…ガキの力じゃないぞ今の！｣

｢いいから、退却するよう言われただろ｣

｢…くそっ｣

ガチャガチャと鎧と武器を手に智が走ってきた道へと歩き始める。

よかった…

腰を抜かしそうになったが、和也のことを思い出し急いで体を起こした。

その時だった。

さっき小屋に向かったはずの和也がまた智のほうに走ってくる。

｢カズ…わっ！｣

膝立ち状態の智を、そのままの勢いで抱き締めた。

思わず背中を反らし地面に打ち付けそうになる。