お隣さんとお兄さん (ページ9)

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「お兄さん、彼女いないの？」

「なんで？いないけど」

「そんなかっこいいのにいないとか、遊びの人はいっぱいいるとか？」

「いるわけないじゃん！毎日寂しくひとりだよ」

「ふーん…」

お粥を食べ終わったのか、リンゴをシャリシャリと噛み砕いている。

「なら、好きな人は？」

「そんなのもいないよ。ほんと、何もない。全然今はそういうの興味ないなぁ」

「そうなんだ」

そう言うと、なぜか足を抱え縮こまってしまった。

「どうしたの…？なんか俺変なこと言った？」

「ううん、なんも」

とか言いつつ、明らかにさっきよりテンションが下がっている。

「智くんは？彼女とかいな…」

「いないよ」

即答…！

てことは、本当にいないんだろうな。

むしろなんで聞くだけ野暮だっていう反応に見える。

困ったな…と思いつつ、お粥を食べたお陰でかなり体が楽になった。

あとは軽くシャワーを浴びて寝てしまえば、明日にはよくなっているだろう。

「ありがとう、ごちそうさま。本当においしかった」

「いいよ、こないだのお礼だし」

ボソボソ言いながらさっさと食べ終わった食器を片付けていく。

俺は苦笑いを浮かべながら、彼のいる台所へ向かった。

「そんなのいいよ。あとは俺やるから」

「…帰ってほしいの？」

「えっ！？そういうわけじゃないけど…」

「なら、いいじゃん。ちょっとくらいいても」

「…………」

ひょっとして、この部屋にいたいのか？

というかむしろ、俺といたい？

てことは、俺といるのが楽しいってことか…？

「ふっ…」

「何笑ってんのさ」

「いや、かわいいなと思って」

「…え？」

俺の言葉に洗い物をする手を止め、目を丸くしてこちらを見た。

「なんか弟ができた感じで俺も楽しいよ。実際弟とはいるんだけどさ。離れて暮らしてるし、それに智くんといると落ち着く」

「…弟か」

「うん。俺もひとりで寂しいからさ、たまにはこうして…」

「はい、洗い物終わった。俺帰るね」

「えぇっ！？」

なぜそんなにテンションの上がり下がりが激しいの！？

「えっ、待って。別にまだいていいんだよ！？」

「いいよ。お兄さん風邪引いてるし。移ったらやだし。これ以上いたところですることないよね？」

「そ、それは、なんというか…」

「じゃあね。お大事に」

俺に何も言わせないまま、パタンとドアが閉まった。

何が悪かったんだろうか。

絶対あれは怒ってる態度だった。

「かわいいって言ったのがまずかったかな…」

その日は昼まで寝過ぎたせいもあり、結局夜中まで眠れなかった。