お隣さんとお兄さん (ページ8)

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「…さん、お兄さん」

「ん…？」

体を揺さぶられ微かに目を開けると、目の前にはあどけない顔をした少年が。

「って、智くんか！びっくりしたー…！」

「そんな大げさに跳び跳ねなくても」

そうか、気付いたら寝てしまっていたらしい。

そうは言っても１時間くらいなのだけど。

「あれ、てかどうやって入ってきたの？」

「玄関開いてた。勝手に入っていいのかなと思ったんだけど。はい、これおつり」

「あ、ありがとう…」

よかった、開けておいて。

鍵掛けて寝てました、なんて言ったら会わせる顔がなかった。

良い香りに誘われてベッドから起き上がり、テーブルのあるテレビの前へ向かった。

「たまご粥だけどいい？あと、適当にフルーツも」

「すごい、めっちゃおいしそう…」

シンプルなたまご粥だけど、出汁が効いてて体が温まるのを感じた。

「お兄さんいっぱい食べそうだから、お鍋にたくさん作っておいた。明日までに食べてね」

「ありがとう。これすっごいおいしい。智くんって料理上手なんだね」

「別に、このくらいだったらいつでも…」

そう言って、自分もお粥を口に含む。

なんだか彼といると気が休まる。

声のトーンも落ち着いていて、ひとりで喋ったりしないし、うるさくないし、良い意味で気を遣わない。

弟というよりは、失礼ながらペットと一緒にいる感覚だった。

「あっ、ちょっと失礼」

携帯が震えたかと思えば、大学時代の友人からだった。

『あっ、もしもーし！翔くーん？』

「うるさっ…！」

相変わらず声のでかい女の子だ。

携帯に耳をつけたが最後、鼓膜がキーンとなるくらいつんざくような声がした。

『うるさいって何よー！ねー、来週金曜日サークルのみんなで飲むんだけど来ないー？』

「金曜か…まあ、21時くらいになってもいいなら行けるけど」

『あっ、じゃあそれでー！場所後で連絡するねー！翔くんに会えるの超楽しみ～！ほんとかっこいいし目の保養～！』

「はいはい、もううるさいから切るよ」

『えーっ、ちょっとー…！』

強引に終了ボタンを押して、プツッ声が途切れた。

まだ就職したばかりなのによくまあ集まりたがるなぁ。

会社でも飲みに行ける友人なんて早々しないからありがたいけど。

「…彼女？」

「ばっ…んなわけないじゃん！！」

思わずお粥を吹き出しそうになった。

今の会話を聞いてどこがどう彼女になるんだ？

むしろ女の子のなかでもかなり邪険に扱ってるタイプなんだけど。