お隣さんとお兄さん (ページ6)

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それから智くんは家族が来てくれたのか、ようやく鍵を手に入れ、20時までには自分の部屋へと帰って行った。

久しぶりの人との食事、楽しかったな…なんて余韻に浸りながら食卓を片付ける。

にしても、結局彼は何なんだろうか。

学生であれば、朝すれ違うことだってあるはずなのに。

そういったことは滅多にない。

案外フレックスで働いてたりして。

それか、夜の仕事とか。

智くんがホストか…。

「っ、ダメだダメだ！そんなの絶対許せない！」

まあ、俺が決めることじゃないんだけど。

堅物人間に育てられたせいか、もしそうだとしたら、と思うとなんだかやりきれない。

無愛想だけど、話せばちゃんとお礼も言えるいい子なのに。

たまに部屋でご飯でも誘ってあげようかな。

そうすればもっと彼のことを知れるし、きっと友達とか、兄弟みたいに仲良くなれるはず。

ある日のこと。

気温の変化で体調を崩した俺は、初めて会社を休むことになった。

元々土日の現場出勤で公休を取れと言われていたからちょうどよかったかもしれない。

しかし明日には治さなければ。

昨日の夜から熱が上がって、昼過ぎまで眠っていたら37度台まで下がっていた。

ここで無理に体を動かすのはまずいから、１日おとなしくしてよう。

とはいえ、お腹は減るわけで。

何か買ってこようとベッドから起き上がり、パーカーとマスクだけ着けてコンビニへ向かった。

何食べよう…カップラーメンでいいかな。

部屋にひとり風邪を引くっていうのはなかなか孤独なんだと今日実感した。

なにせ、料理もできないがためにお粥など作れるはずもない。

やっぱり栄養のあるものがいいかな…とお弁当売り場を物色していると、隣で見ていた人と肩がぶつかった。

「あっ、すみません…って」

見れば、黒いパーカーにフードを被っているが、どう見てもお隣さんの智くんだった。

２週間ほど顔を会わせてなかったから、なんだか久しぶりな感じがする。

「あれ、お兄さん。どうしたの、こんな真っ昼間から」

「いや、風邪引いて会社休んでて。買い出しに来た」

「そうなの…？大丈夫？」

下から潤んだ瞳で覗き込まれ、ドキッと心臓が跳ねた。

「だ、大丈夫！なんか食べりゃ明日には治るでしょ」

「食べるって、それを…？」

「あっ、いや、これは…」

俺の持つカゴにはカップラーメン数種類と飲み物だけ。

これにサラダを付け足せばいいかと思っていたが、さすがに年下の男の子に見られては、はいそうですとは言えない。