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結局あれは何だったんだろう。
週が明けても、週末が過ぎても、考えるのは智くんのことばかり。
いっそのこと聞いてしまおうか。
どういう意味だったの？って…さすがにデリカシー無さすぎるかな。
最近の若い子の考えることは理解できないって言うけど、まさにこういうことなのかもしれない。
俺、ひょっとして歳取った？
いやいや、智くんは18歳。たった4つ違いだ。
そこにジェネレーションギャップを感じてどうする。
今日は久しぶりに定時で上がったので、DVDでも見ながら晩酌しようと気分が上がっていた。
智くんもいれば誘ってみようか。
俺も朝は当然忙しいし、帰りも疲れて風呂入ってすぐ寝てしまうし、なかなか誘える機会見つからないでいた。
今日こそこないだの失態を払拭するぞ。
そう意気込んで部屋まで上がろうとしたのもつかの間。
「うおっ！？」
階段を登りきったところで、出会い頭に誰かと衝突してしまった。
前にバランスを取ったからいいが、両手が塞がってるため、危うく階段から落ちるところだった。
「あっ、智くんか…ごめんね。怪我はない？」
ちょうど考えていたところに彼は現れた。
しかし出掛けるところなのか、いつものラフな服装と違って、白いシャツに黒のカーディガンという綺麗めの格好だった。
「…すみません」
聞こえるか聞こえないかというか細い声で言うと、顔を背け俺を避けようとする。
でもその一瞬だけ、唇を噛む姿が見えた気がした。
「待って！」
俺はとっさに腕を掴んで呼び止める。
智くんは立ち止まって動かない。
「大丈夫…？」
なぜそう聞いたのかは自分でもわからなかった。
ただ、いつもと違う。
悲しげで、思い詰めた表情。
いや、もしかしたらこれが本来の姿なのかもしれない。
「なんで、そう思うの？」
震えた声で彼は言った。
「お兄さんに、俺の気持ちがわかるの…？」
振り向いたときには、もう頬に涙が伝っていて。
俺は買ったばかりのビールや食材を床に落とすと、そのまま腕を引いて胸に抱き止めた。
「…っ、もう、いや」
小さく呟くと、腕の中で微かに背中を震わせているのがわかった。
想像以上に細い体に胸が痛くなって、よりいっそう強く抱きしめる。
本当はずっと、こうして欲しかったのかもしれない。
そう、あのときもきっと。
彼の合図に何も応えないまま、知らず知らずのうちに傷付けてしまっていたのだろう。
例え100人中100人がそんなことに気付かなかったとしても。
俺だけは気付いてあげるべきだったんだ。
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作者名：京
| 作成日時：2021年3月21日 15時
