お隣さんとお兄さん (ページ11)

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いや、待てよ。

俺が彼に誤解を与えたからって、それが何なんだ？

別に気に病むことではない。

ただ友達との二次会をうちでやるってだけだ。

ただ、この状況はなぁ…。

俺に絡み付いてべろべろの女の子。

誰しも関わりたくないと思うだろう。

「あー、お隣さーん？こんばんはー」

「バカお前…！余計なこと言うな！」

「えー？ちょっ、翔くん乱暴…！」

無理矢理彼女を部屋に押し込んで、何事もなかったかのように智くんのほうに体を向ける。

が、当然ながら彼は無表情で。

それどころか、凍り付いたような冷たい視線を送ると、なにも言わずに自室へ入って行った。

こ、怖い…。

こればっかりは智くんでなくても気を悪くして当然だろう。

中へ入れば、死んだようにフローリングに横たわる、パンツ見えそうなほどスカートを捲り上げた女子とも捉えがたい女子がいるのだから。

午前3時。

ひとしきり飲んだ俺たちは案の定もうぐったりしていて、朝まで飲む！なんて意気込んでいたやつも今は新品のソファーの上でいびきをかいている。

俺はというと、時間が経つにつれ素面に戻ってきたのか、思ったよりも目が冴えていた。

今のうちにとテーブルを片付けながら、まだ彼のことが少し気になっていた。

ただでさえ最後に会ったとき気まずい感じで別れたのに。

これ以上関係が悪くなるのは避けたいところだ。

まさか起きてないよな…なんて思い立ったように玄関を開け外へ出た。

そして、そーっと204号室のドアに耳をそばだてる。

…これ、誰かに見られたら通報モノだよな。

いずれにせよ中からは物音ひとつしないし、すでに布団の中なのだろう。

また後日改めよう、と足を返そうとしたときだった。

アパートの下に、街灯に照らされるように丸い背中が見えた。

あの黒いパーカーって…。

まさかと思い下まで駆け降りると、アパートの前にある隣のマンションの駐車スペースに、小さく体を縮込ませて屈んでいる姿があった。

「智くん…？」

俺の声にハッと振り向く。

一度は目が合ったものの、また何も言わずに反らされた。

「どうしたの、もう３時だよ？」

応答はない。

こんな時間にひとりで何をしているのやら。

間違っても誰かに襲われたりしたらシャレにならない。

俺は隣に来て同じようにしゃがむと、彼の顔色を伺った。

「眠れないの…？」

そう聞くと、彼の体はさらに小さくなった。