４９ ページ49
仕事を終え駐車場に向かおうと地下まで降りると、見覚えのあるシルエットを発見する。
グレーのスーツに黒髪…。
「二宮さん…？」
駐車場の柱のところに寄りかかっていたのは、以前智くんや雅紀を交えて飲んだときに掴み合いの喧嘩をした、二宮和也さんだった。
「お久しぶりですねー、櫻井さん」
「お久しぶりです…どうしてこんなところに？」
「いや、たぶん近況が気になる頃じゃないかなと思って」
「え…？」
彼は俺の方へ近付くと、足を止めることなく周囲を歩き回りながら話した。
「大野さん、うちに泊まってんの知ってる？知らないよね？」
「っと、知らないけど、そうなんじゃないかとは思ってました…」
「うん、そうなの。俺は毎日あいつのかわいい寝顔も、着替えてるときの細い腰も、風呂上がりの裸も全部見てんの」
「…何が言いたいんですか？」
気に障ることを言って煽るところは相変わらずのようだ。
「それでも、大野さんは毎日元気なさげで、翔くん翔くんって。そんな態度取られたら襲う気もなくなるって話ですよ」
「智くんが…？」
「あの人、あんたに追い出されても悪口のひとつ言わず、痩せ我慢しては泣いたりして。さすがに俺も可哀想になってきちゃってね」
本当、なのだろうか。
てっきりもう嫌われてしまっているとばかり思っていたのに。
あんなことをしてしまってもまだ、俺のことを考えてくれているというのか。
「あんたはまだあいつのこと好きなわけ？嫌いならはっきり別れるって言ってやれよ。中途半端が一番困るだろうし」
「嫌いなわけじゃない…でも、好きだからって理由だけで一緒にいられないことだってあるんだ」
「贅沢だね、櫻井さんって」
二宮さんは腕を組みながら俺の目の前に立ちはだかった。
「俺が手に入れられないものをたくさん持ってるのに、平気で手放してまだ取り返そうとしてるなんて、贅沢だよ」
「それには理由が…！」
「自分の都合ばかりであの人を振り回してる自覚ある？あいつがずっと我慢してきたの、気づいてないわけじゃないよね」
「、それは…」
言い返そうと口を開くと、ぐいっとネクタイを掴まれ、鋭い目付きで睨み上げられた。
「あいつを不幸にしようとしてんのはお前の嫁でもなんでもない。お前自身の態度だよ」
それだけ言い残すと、彼は駐車場を後にした。
その通りだった。
そもそもの発端はすべて自分のせいなのに。
まだ取り戻せるという期待すらも、気付けば彼の心を弄んでいるという事実になっていたのだ。
つづく
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京(プロフ) - 碧央。さん» いつもありがとうございます！ここまで読んでいただけて本当に嬉しいです！最後まで更新頑張ります！(*^.^*) (2021年2月23日 8時) (
レス) id: 3db66e1bf0 (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - ゆりかさん» ありがとうございます！！潤くんは確実に絡ませる予定なので、ご期待ください！(´- `*) (2021年2月23日 8時) (レス) id: 3db66e1bf0 (このIDを非表示/違反報告)
碧央。(プロフ) - この展開、ドキドキしてすごく好きです！更新待ってます！頑張ってください(*^^)v (2021年2月22日 2時) (レス) id: c1ed4221ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - 松潤も大野くんのことを気になり出してちょっかい出して欲しいです！！翔くんとにのから大野くんを奪って欲しいです！！更新待ってます^ ^ (2021年2月21日 16時) (レス) id: ce3588ab80 (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - naoさん» naoさん、ありがとうございます。今は辛い内容ですが、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。 (2021年2月19日 23時) (レス) id: 3db66e1bf0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京
| 作成日時：2021年1月25日 0時
