３２ ページ32
カズは会社から徒歩圏内の、５階建てのアパートに住んでいる。
入社した当時は実家だったけど、ほどなくしてこの辺りに独り暮らしを始めた。
その頃は今みたいに担当案件も多くなく、ときどき同期何人かで集まって飲むこともあった。
次の日会社だったりすると、カズの家に泊まらせてもらったりして。
今はお互い忙しいし、会社ですれ違う程度の関係になってしまったけど、この部屋に来るとあの頃を思い出してちょっと懐かしくなる。
「とりあえずジャケットと下も脱いで。泥跳ねてたらクリーニングに出さないと」
玄関のところで言われるがまま上着を脱いで手渡した。
シャツまで雨が浸っていて、寒いわけだと妙に納得する。
「智、下も」
「…恥ずかしい」
「んなこと言ってる場合か！廊下びしょ濡れになっちまうだろうが」
「あっ、待って！」
ガチャガチャとベルトを外してバサッとスラックスを下げられた。
いくら男同士とはいえ、目の前でパンツ姿をさらけ出すのはいかがなものだろうか。
脱がされたものは仕方ないと思い、シャツと下着の上下１枚だけの状態にされると、次はどうするのかとじっと彼の方を伺った。
するとカズはぎょっとした顔をして、気まずそうに目を反らした。
「っ、お前さぁ…」
「ん？」
「いや、めっちゃ肌透けてんだけど」
「あぁ…」
そりゃ濡れたんだから、当たり前じゃん。
何を言ってんだろうって透けた胸元をじーっと見ていると、ハッとあることに気付いた。
「ひょっとして、触ろうとしてる？」
「はぁ？」
「ダメだよ。一回500円取るよ」
胸元を隠しながら言うと、しばらくきょとんとしていたけど、だんだんといつものいたずらっぽい表情に変わった。
「じゃあ500円払うって言ったら？」
「カズは変態だなって思う」
「あっそう」
そう言って何やら後ろポケットから財布を取り出すと、じゃらじゃらと小銭を漁り出した。
なんか、嫌な予感。
「はい、500円」
500円玉を目の前に見せてきたと思ったら、水平に持ったまま端の部分で、透けた胸の突起を弾かれた。
「んんっ…！」
ぴくん、と突然の刺激に身体が震える。
カズはニヤッと笑うと、そのままシャツの胸ポケットに500円玉を落とした。
「これで１回ね」
「っ、ば、ばか！！冗談やめろよ」
思った以上に反応してしまった自分に顔が熱くなるのを感じる。
「冗談ねぇ…」
意味ありげに呟くと、それ以上は何もせず俺のバッグを奪ってさっさとリビングのほうへ行ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京(プロフ) - 碧央。さん» いつもありがとうございます！ここまで読んでいただけて本当に嬉しいです！最後まで更新頑張ります！(*^.^*) (2021年2月23日 8時) (
レス) id: 3db66e1bf0 (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - ゆりかさん» ありがとうございます！！潤くんは確実に絡ませる予定なので、ご期待ください！(´- `*) (2021年2月23日 8時) (レス) id: 3db66e1bf0 (このIDを非表示/違反報告)
碧央。(プロフ) - この展開、ドキドキしてすごく好きです！更新待ってます！頑張ってください(*^^)v (2021年2月22日 2時) (レス) id: c1ed4221ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - 松潤も大野くんのことを気になり出してちょっかい出して欲しいです！！翔くんとにのから大野くんを奪って欲しいです！！更新待ってます^ ^ (2021年2月21日 16時) (レス) id: ce3588ab80 (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - naoさん» naoさん、ありがとうございます。今は辛い内容ですが、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。 (2021年2月19日 23時) (レス) id: 3db66e1bf0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京
| 作成日時：2021年1月25日 0時
