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「ただいま」
遅く帰った日の家は暗い。
当然、物理的に暗いというわけではない。
ソファーに座ってじっとテレビを見ている姿が目に入ったときにはもううんざりしてしまう。
ときどき考える。
なぜあのとき結婚してしまったのか。
その考える頻度がここ最近ではさらに多くなった気がする。
帰るたびに機嫌を伺って、どう対処しようか、抱き締めたら収まるなんてことはもうない。
俺にすら、やり方が見つからない。
「遅かったね」
「うん、ごめん。会食で」
「ふーん…」
それ以上は何も言われず、ほっと胸を撫で下ろす。
風呂に入る前に携帯を確認すると、さっそく先ほどの彼から連絡が来ていた。
『今日はありがとうございました。次はぜひ仕事の話は無しで飲みに行きましょう』
たかだか男友達を飲みに誘うくらいなんてことないはずなのに、彼にたいしては妙に慎重になってしまう。
俺はいったん返さずに洗面台に携帯を放置した。
「男か…」
湯船に浸かり、大野さんのことを思い返す。
本当に綺麗な人だったな。
あれじゃ、彼女とかいるんだろうな。
でも無口だし、女の子みたいだからって意外と童貞だったりして。
それはそれでなんだかかわいい気もするけど…って、俺はアホか。
ザバッと立ち上がり、どう返信しようかと、そればかりを考えていた。
風呂から上がった頃にはリビングの電気は消えていて、彼女の姿もなかった。
別に毎回毎回こんな遅くまで待つ必要ないのに。
むしろプレッシャー以外の何物でもないから、頼むから寝ていて欲しいとマンションのエレベーターの中で祈っている。
寝室に入ると案の定ぐっすりで、最初からこうしてくれたらいいのに、なんてひそかに夫らしくない発言をした。
妻と身体の関係はない。
25のとき結婚して、最初の頃は子供のこととかいろいろ話し合ってはいたが、今はすっかり赤ちゃんに返ってしまったようだ。
俺が甘やかしすぎたのがいけなかったのだろうか。
この分じゃ子供ができたところで、子供が二人、みたいな状態になるだけだ。
妻が身体を求めてこないことが唯一の救いではあるが、そっちの欲の行き場はなくなっていて。
忙しいのもあいまって、男としての何かを捨てて生きてるような、そんな感覚だった。
『こちらこそありがとうございました。早速ですが、来週の火曜日は空いてますか？』
そつのない文章で、返信をした。
しばらく画面を見つめていると、ブー、と上に通知が表示される。
俺は確認しただけで満足して、携帯を放り投げ眠りについた。
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京(プロフ) - 碧央。さん» 碧央さん、ありがとうございます！詳細な感想までいただけて…本当に本当に嬉しいです！！まだまだ書き続けたいと思いますので、今しばらくお待ちいただければと思います！ (2021年1月24日 1時) (
レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - ゆうきさん» ゆうきさん、ありがとうございます！！細かく読んでいただけて大変嬉しく思います。続編はもう少々お待ちくださいませ！ (2021年1月24日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - butazch715413さん» ありがとうございます、そう仰っていただけて本当に励みになります！続編は書く方向で進めますのでもうしばらくお待ちくださいませ。 (2021年1月24日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
碧央。(プロフ) - 初めまして。毎日読みに来るのが楽しみで続きが気になって仕方ないほどにとても好きな物語でした。切なく胸が痛くなる場面や、ドキドキして高鳴り、にやけてしまう程ラブラブな場面、とても楽しませていただきました！続編読みたいです！お願いします！ (2021年1月23日 23時) (レス) id: c1ed4221ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 京さん、初めまして。京さんの描く色っぽくて魅力たっぷりな大野さんが大好きです。お話の更新をいつも心待ちにしておりました。このお話の続編、是非是非お願い致します！楽しみにしております！ (2021年1月22日 11時) (レス) id: 096605d473 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京
| 作成日時：2021年1月3日 1時
