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「翔くんって櫻井翔だよね。ねぇ、どこまでいってるの？大野くんの処女、もう櫻井翔のものなの？」
「やだやだ！！何言ってるの、気持ち悪い！！！」
「気持ち悪いってなんだよ。確かめてやってもいいんだぞ」
「いやっ、誰か…！！」
ぐいっと襟元を引っ張られ、鎖骨を覗かせた瞬間、男の目の色が変わったように見えた。
ゾクッと鳥肌を立てて、俺は恐怖に体が固まってしまった。
もう、だめだ…！
縮こまったまま目を瞑っていると、体がふわっと軽くなった気がした。
そして、求めていた温もりが全身に広がる。
「っ、しょう、くん…」
見上げれば、求めていた彼の姿があった。
走ってきたのか、汗だくで、激しく息を切らしている。
それでも、男に対する表情はまるで鬼の形相だった。
「お前、何やってんだよ」
泣きながら震える俺の体を宥めようと背中をさする。
「何って、大野くんに告白してたの。つーかなんで櫻井が邪魔しに来るわけ？サークルのやつらと飲みに行ってたんじゃないの？」
「なんでそんなこと知ってんだよ…！」
「だって俺も同じ大学だもん。アイドル級の笑顔を持つ櫻井翔くんと同じね」
「はっ…！？」
翔くんは信じられない、という表情をする。
「高校のときからお前と大野くんが付き合ってるのは知ってたよ。有名だったしね。俺の方がよっぽど大野くんを好きなのに、なんで櫻井なんかって。結局大野くんも顔かって思ったよ。だから俺も同じ大学に入って、なるべくかっこよくして、また大野くんに告白できるように準備しておいたんだ」
「家はどうやって…？」
「櫻井をつけてった。大野くんをつけるとお前みたいなのがうじゃうじゃ沸いてくるけど、お前なら警戒しなくていいから楽だったよ」
「っ、それでこんなこと…ふざけんなよ、」
ぐいっと翔くんが胸ぐらを掴むと、男はニヤッと笑った。
「殴れんの？優等生の櫻井くんに。松本だったら俺もやばかったけど、お前なら勝てそうだわ」
「お前…っ、！」
「翔くん！！」
人を殴ったことなんかないのに。
背丈は変わらないとはいえそんなことはさせられない。
止めに入ろうとしたときだった。
ゴッ！と鈍い音を立てて、地面に翔くんが倒れ込む。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
でも、男の握りこぶしを見て、この男が彼に何をやったか一瞬で理解した。
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作者名：京
| 作成日時：2020年8月16日 14時
