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「あなたの性格はよく知ってるし、話してくれてありがたいって思う。俺を信用してくれてるんだなってすごく嬉しいよ」
でも、と彼は言った。
「嘘をつくことも優しさだよ？その純粋な素直さを普段はすごくかわいいと思っても、今は人を傷付けてるだけ」
「俺、翔くんのこと傷付けた…？」
「それ聞いて傷付かないやつなんかいないでしょ」
呆れたように話す彼がなんだか突き放されてるように感じて、心がえぐられる思いだった。
「俺、何もしてないよ！俺たちはただの友達で、ただ酔っ払ってただけで、」
「普通の男同士だったらそれで済むかもしれないけど、あなたは俺の恋人だよ！？どんな理由があろうと、恋人が別の男と一夜過ごしたなんて聞いて動揺しないわけがないだろ！」
「じゃあ俺は友達を作っちゃだめなの！？」
「そういうことじゃなくて、よりによってあなたに好意を持ってた人間だから…」
「カズは友達だもん！！なんでわかってくれないんだよ！！！」
部屋中に響き渡るほどの大きな声に、自分自身が驚いていた。
気が付けば頬はぐっしょりと涙で濡れていて、拭うことも忘れたままぽたぽたとソファーに染み込んでいく。
後ろめたさがあるということは、自分だってカズのすべてを信用しているわけではないはずなのに。
それでも、悪く言われるのが嫌だった。
寝てる間に何かしようなんて真似、彼は絶対にしない。
俺は酔っ払っていてもはっきりと翔くんへの想いが強いことを伝えたはずだし、カズは友達だって言って、また才能を認めてくれた、
だけど、昨夜の会話までは翔くんに話すことができなかった。
話してもきっと理解は得られない。
これは二人にしかわからない、二人だけの間に起きたことだから。
「もう、いい。俺、友達いらない…」
「っ、何言って、」
「いつもいつも誰かと知り合うたび、みんなが俺に言う。あんまり仲良くしすぎるなって。思わせぶりな態度取るなって」
「智くん…」
もう、顔中涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
コンプレックスなんか、無くなってしまえばいいのに。
結局俺は、高校のときから何も変わっていないんだ。
「ずっとそんなふうにして生きてきたのに、まだ、だめなの…？てっきり友達になれると思ってたのに、思わせぶりな態度で近づいてくるのは、みんなのほうじゃん…っ、」
翔くんの姿が、涙で真っ白になった。
自分を理解してくれる人はいる。
でも、それ以上に理解されないことが多すぎる。
俺は翔くんみたいに、器用に生きてきた人間じゃないんだ。
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作者名：京
| 作成日時：2020年8月16日 14時
