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だめ、やっぱり。
俺に嘘ついたりごまかしたりなんてできない。
それも大切な人に。
「ご、ごめんなさい…実は、今カズと同じ学校なの」
「カズって…？」
「前俺の店で演奏してくれていたギタリスト」
あぁ…と言って、翔くんは少し記憶が蘇ったようだった。
すると今度は眉をひそめ、ますます険しい表情へと変わっていった。
俺は焦って、事の詳細を話し始めた。
学校であったことも、カズと同じクラスで、准くんから助けてくれたことも。酔っ払った俺を介抱して、ホテルまで送り届けてくれたことも。
そのまま、二人で一夜を明かしたことも。
覚えてる限りのことをすべて話した。
翔くんは俺が話し終わるまでずっと黙って聞いていて、次第に相づちを打つ回数が少なくなっていった。
「それで、気付いたら朝になってて。カズはもう部屋にはいなくて…」
「うん」
「おわ、りです…」
言い終わると、ソファーの上で正座をしながら、彼の表情を伺う。
「それって、何もなかったってことでいいの？」
「な、ないよ！！だって、カズは友達だって…」
「でもその後の記憶はないんでしょ？朝まで」
「ないけど、それは寝ちゃったから。」
「寝てる間に何かされてるかもしれないのに？」
「そんなことしないよ！」
「どうしてわかるの？」
「それは…」
友達、だから。
としか言えない。
だってあのときのカズの目は、最後に別れたときと同じで。
純粋にそう思ってる、嘘のない目だった。
他の誰かに言っても伝わらないかもしれないけど、絶対そうだって確信してる。
「あなたに好意を持ってた人が、目の前であなたが眠ってるのに何もしないなんてことある？」
「あるよ！だってほら、雅紀とか！」
「それは俺の友達だからだろ！！俺はそいつのこと何も知らないし、そいつだって俺を知らない！雅紀とは全然違うよ！」
突然張り上げた声にびくっと肩を跳ねさせた。
それを見た翔くんは一瞬怯んだものの、言葉を続けた。
「智くんさぁ…素直に教えてくれるのはありがたいけど、俺だって知りたくないこともあるんだよ？」
「うん…」
「その子が偶然同じ学校で、同じクラスなのもわかった。でも、一緒に部屋で過ごしたことなんて、俺が聞きたいと思った？」
「それは、嘘をつきたくないから…」
「俺が何回電話しても出なかったのに、その間ベッドで二人仲良く寝てましたなんて、そんな話誰だって聞きたくないと思うけど」
「っ…、」
じわっと目に涙が浮かんだ。
言葉のひとつひとつが胸に突き刺さって、酷く痛んだ。
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作者名：京
| 作成日時：2020年8月16日 14時
