３４ ページ34
ボイストレーニングを終え家に帰った頃には21時を回ろうとしているところで。
バタバタと動き回ったせいで、さすがに疲れてしまった。
カズには、『同じ学校だなんてびっくりだね！明日からよろしくね！』って当たり障りのない感じで送って、今は様子を見ているところ。
「どうだった？学校」
「なんか、変なひといっぱいいた」
「変なひとって！大丈夫な人たちだよね？」
「うーん…」
「えっ…ちょっと勘弁してよ。いきなり狙われたとかじゃないでしょ？」
「狙ってるとかは、わからないけど…」
一人、カズなんだよなぁ…とは言えず。
翔くんにとっては嫌な記憶だろうし、ぶり返すことになってしまう。
カズはあくまでも友達であり、よっぽどのことがない限り翔くんから心が移ることはない。
カズ自身ももうわかっていることだし、松岡さんの言うようなトラブルはないと思うのだけど。
「あなたのことは束縛したくないし、俺が大学入った頃はかなり心配かけたから、誰といようと咎めるようなことはしないけど…」
「大丈夫だよ、翔くんも松岡さんもみんな心配しすぎ！俺はいつも通りだよ」
「いつも通りだから心配なんだって…」
呆れたようにため息をつく彼に、体をずらして近付き手を握った。
「そんなに言うなら、毎日一緒に学校来てよ」
「できるもんならそうしたいよ」
「えー、翔くん本気？」
「当たり前じゃん。こんなにかわいい子がたくさんの人の目に触れると思うと、耐えらんないかも」
翔くんの手がパジャマの裾から滑り込んで、直接背中を撫でる。
心地よさに一瞬睡魔に襲われそうになると、次第に裾が捲られ毛布の中で上半身が露わになる。
「わかんない、どこがかわいいの？」
「んー、どこだろうねぇ」
そう言って翔くんは、耳たぶに噛み付いた。
「ぁっ…、」
「こうやってすぐ感じちゃうとことか」
「それの何がかわいいの…？」
「かわいいことをわからないところが、かわいいよ」
「なんだよそれ！」
何の気無しに笑うと、急に真剣な面持ちになって、俺を抱き締めた。
「だから、余計に心配」
「翔くん…」
「俺は、あなたを失うなんて考えられないから」
細い指先で前髪を掻き分ける。
俺はくすぐったさに目を細めた。
「俺だって、そんなこと考えたくない…」
この温もりが消えてしまうなんて、絶対にありえない。
どんなことがあっても裏切るような真似はしない。
だから翔くんも、俺のことを信じていてほしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京
| 作成日時：2020年8月16日 14時
