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「ご、ごめんなさい。友達と話してて」
「なんだ、もう友達できたのか？」
そう言ってポケットに手を突っ込みながら俺と同じ背丈のカズを見下ろす。
「こいつ無口で引っ込み思案だけど、素直ないいやつだから、よろしく頼むよ」
ぐしゃぐしゃと俺の頭を撫でる姿に、一瞬ムッとした表情をした。
「智、誰なのこの人」
「あっ、と…この方は松岡さん！俺の、その…お世話してくれてる人で…」
「世話ってお前、俺は執事か！」
はははっ！とでかい声で笑う彼をよそに、俺は苦笑いを浮かべる。
「なに？いつから知り合い？」
「きょ、去年の、９月頃かな…？」
「なら、俺の方が早いよね」
「ちょっ、カズ！」
何を思ったか、ぐいっと肩を抱き寄せられる。
「誰だか知らないけど、俺の方が智のこと知ってるんで。余計なお世話です」
「はぁ？なんだお前、生意気なやつだな」
「生意気で結構。俺は智の親友なんで。今日会ったばかりの浅い関係じゃないんで。あんたに言われなくても全部わかってます」
それを聞いて、松岡さんは少し驚くも、突然プッと吹き出した。
「ははっ、すげぇ独占欲だな！でも残念、智にはもう決まったやつがいるんだぞ？」
「知ってますが。それも承知で好きなんで」
その言葉に、あっ、と思った。
カズでさえ失言した、という顔付きで口を開けたまま固まっていた。
そう、まだ、彼は俺のことが好きだったんだ。
「へー、やるじゃん。叶わぬ恋を諦めきれないってわけ？俺も彼氏いるって聞いたときは内心ショックだったけど」
「ま、松岡さん！！」
「こいつと彼氏の絆は固いよ？どう頑張ったって断ち切るのは無理。男ならねちねちしてないで、振られたら綺麗さっぱり水に流せよ」
「っ、お前に何がわかるんだよ！」
「お前こそ何がわかるんだ？俺は仕事でここに来てんだ。智のこと好きなのはいいけど、仕事は優先させてもらう」
行くぞ、と言って俺の手を引く。
俺はカズのことが心配で、そこを動けずにいる。
「…仕事って、どういう関係？」
彼が低くか細い声で聞いた。
「親友なのに知らないのか。俺はこいつのプロデューサー。まあ、もはや兼マネージャーみたいになりつつあるけどな」
「プロデューサー？何の？」
「何のって、こいつをプロデュースするの」
「何のために？」
「決まってんだろ、歌手になるためだよ」
あのー、俺あんまり愚痴ったりとかするタイプじゃないけど、今だけは言いたい。
なんで隠そうとしていたことが、こうも簡単にバレるわけ…？
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作者名：京
| 作成日時：2020年8月16日 14時
