�� ページ25
「んんっ…くす、ぐった…」
「１年経った今でも、まだ信じられない。あなたが俺の手で感じてるのが」
「翔くん…」
「いつも思う。夢みたいだなって」
「っ、ぁ…」
体に手を這わせながら耳に唇を寄せる。
指先で胸元から腹筋のラインをなぞると、ぴくぴくと魚のように体を跳ねさせた。
「すっごく綺麗。ほんと、全部が好き」
「っ、俺も…翔くんの全部が好きっ…触られると、いつも胸がぎゅって苦しくなるくらい、そのくらい、好き…」
その言葉を聞いた俺のほうが苦しくなった。
めちゃくちゃに壊したいって思うのに、泣いてる姿を見るとそっと優しく撫でてあげたいって思う。
なぞっていたラインに今度はキスを落としていく。
まだ擽ったいのか、身を捩らせながらその感覚に耐えていた。
「大丈夫だよ、怖くないから」
「んっ…、」
思いっきり抱き締めながら深く口づけると、それに応えるように首に腕を回した。
体も密着していて、足も絡まっていて。
このまま一生離れられなければいいのにって思うくらい、激しくキスをした。
「はぁっ、ん…」
「だめ、まだ」
「っ、ぅ…」
苦しいと言わんばかりに顔を反らすも、顎を掴んで再び唇を重ねる。
もう涙なのか唾液なのかわからなくなっていて、部屋には水音と二人の息遣いだけが響き渡っていた。
「ねっ、しょう、くん…」
「ん…？」
「俺たち、これからもずっと一緒だよね？離れたり、嫌いになったりしないよね…？」
「どうしたの、急に」
「怖いの…翔くんが、大人になって、いろんな人と出会って、俺から離れていくのが…」
あぁ、なんだ。
彼も同じ気持ちだったんだ。
俺が思う不安とまったく同じ。
でも、そのことを口に出せるだけ、彼のほうが上手だったようだ。
「俺も怖いよ。１年後どうなってるのか、考えるだけで怖い」
でもね、と言って俺は続けた。
「今言えることは、あなたのことを一生好きでいられる自信があるってこと。１年後のことなんて誰にもわからないけど…今はこの世界中の誰よりも智くんのことが好き」
「翔くん…」
「だから来年もまた、同じこと言ってあげるね」
軽くキスを落とすと、彼は泣きながら体にしがみついた。
それでもまだ彼は不安だろうか。
どれだけ好きだって言葉にしても、いつまでもその感情はつきまとうもの。
だったら、せめてこうして口に出して、少しでも取り除いてあげられたら。
きっと来年も同じようにできるはずだ。
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作者名：京
| 作成日時：2020年8月16日 14時
