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なんだかんだでくだらないことを話ながら帰路についたせいで、肝心の話を切り出せずにいた。
迎えに行った意味もまったく無し。
いつものお休み通り、買い物して、ご飯作って、二人で食べて。
で、終わったら翔くんは塾の予習をしていて。
その間俺は食器洗ったり後片付けをして。
何も変わらない日常。
松岡さんからはまだ連絡がないけど、あの人もアメリカ行きには反対するだろう。
繁忙期に歌わないなんて、やる気あるのかって怒られるのがオチだ。
「ねーえ、翔くん…」
結局切り出せたのは、ベッドに横になって、いつものように触りあって、翔くんが裸のままうつ伏せで携帯をいじっている最中だった。
「なーに？」
携帯から目を離さずに返事をする。
「クリスマスね、一緒に旅行しない？」
「えっ！？いいけど…むしろいいの！？」
「うん、店長が休みくれたの」
「いいじゃん、行こうよ！！どこ行く！？」
翔くんは携帯を置いて申し訳ないほど手放しで喜んでいる。
「アメリカ」
「…え？」
「アメリカ」
「アメリカ？」
「アメリカ」
「うん…あ、アメリカね…」
パスポートあったかな…とかボソボソ言っているのを無視して、俺も真っ裸の状態で彼の体に絡みつく。
「翔くん、一緒に父ちゃんと母ちゃんのとこ行こう」
「うーん…でも、あと三ヶ月か。せめて半年くらいは余裕ほしいんだけど…」
「俺翔くんと一緒に行きたい」
「智くん…」
毛布の下から潜り込み胸元に頭をつけ、首に腕を回す。
そうして見上げれば、すぐに彼の顔が見えた。
「悪いけど、今はかわいい顔しても効かないからね」
「してないもん…」
ぷくっと何の気なしに顔を膨らます。
「さっきまであんなに乱れてたのに、すぐ子供になっちゃうんだから」
「んんっ…、」
背中を直に撫でながら口付けられる。
気持ち良い。人の肌ってどうしてこんなに心地よいのだろうか。
触れては離れを続けていると、翔くんは頬を両手で挟み込んだ。
「唐突に言うからには、それなりの考えがあって言ってるんだよね？」
「うん。信じてくれる？」
「まあ、あと100回キスしてくれたら話くらいは聞いてあげてもいいけど」
「いいけど、翔くんは？」
「何が？」
「100回で、足りる…？」
俺がそう言うと、人差し指で唇を撫でた。
「どういう発言してもいいけど、後悔だけはしないようにね」
何に対して言ってるのか聞かなかったけど、もちろん後悔なんてしたくないよ。
また新しいことを二人でできるのがむしろ嬉しいって思う。
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作者名：京
| 作成日時：2020年8月16日 14時
