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「カズ、」
最後の曲が終わり人だかりが消えた頃、ギターをケースにしまっているところで声をかけた。
カズは振り向くと、少し驚いた顔をした。
「智、来れないんじゃなかったの？」
「うん…用事早く終わったから、出勤前に来ちゃった」
そう言うとカズはあからさまに嬉しそうに笑顔を作って、また俺の胸は痛んだ。
「聞いた？俺ジャズやめるの」
歌っていた駅から店のある駅までゆっくり歩きながら、カズが話し始める。
「うん…本当にもう、お店に来ないの？」
「客としては来るかもしれないけど、演者としてはもうないかもね。俺さっきみたいなさ、ポップスがやりたいから」
さっきのポップスだったんだ…とか思ったけどあえて言わなかった。
「ねぇ、どうして今日俺のこと誘ったの？路上ライブ、初めてじゃないんでしょ？」
そう聞くと、うん、と言って話を続ける。
「智はどう思った？」
「え？」
「いつも頑張って働いて、一生懸命音響のこと勉強して、でも全然休めなくて疲労もストレスも溜まって…って感じだったでしょ？」
「あ、うん、まあ…」
疲労は正直ものすごく溜まっていた。
昨日休んだとはいえ、次の日出勤だと思うとやはり緊張はするし、億劫になってしまう。
人間ならおそらくみんなそうだろう。
「そんな中で俺の歌聞いてどう思った？」
「…正直に言っていいの？」
「うん、聞かせて」
俺は一呼吸おいて、出来る限りの言葉を紡いだ。
「俺はね、歌のこととか、音楽とか、まだ何も知らないしわからないことも多くて…でもね、今日カズの歌を聞いてなんだかスッキリしたっていうか…現実から離れて、どこか遠くにいるみたいな、そんな感覚になれて…」
でもこれって、もしかしたら歌のせいじゃないのかも。
俺は、カズに会ったから、胸のつっかえが取れたのではないか。
「歌は人を元気にするって言うでしょ？初めて俺の歌を聞いた人が、例えば家に帰って、そういえばあそこで聞いた歌よかったなぁって、そう思ってくれるような人間になりたいんだ」
青空を見上げる彼の姿は、純粋な夢を追う少年そのものだった。
「少しは、音楽に興味持った？」
少しどころじゃなかった。
俺は今まで、何を思ってお客さんに音楽を聴かせてきたのだろうか。
演者が演奏しやすいように、そのことだけを考えてやってきた。
でも演者がお客さんを楽しませたいと思うように、本当は俺も、そうしなきゃいけなかったんだ。
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京(プロフ) - 富喜田さん» そう言ってくださって嬉しいです！がんばります！！ (2020年7月12日 18時) (
レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
富喜田 - 何度もすいません。 すごく心に突き刺さりました。 大好きです！ (2020年7月10日 17時) (レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - 富喜田さん» はい、ありがとうございます！！ (2020年7月10日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
富喜田 - 面白かったです！ これからの進展楽しみにしてます。 頑張ってください。 (2020年7月8日 6時) (レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京
| 作成日時：2020年7月7日 17時
