３０ ページ30
ここからが怒濤の１週間だった。
ほぼ毎朝９時に起きて１０時には店に着いて開店準備。
１３時からライブと学生向けのセッションタイム。
休憩取りつつ夜の準備をして、１９時からライブ。
なんでこんなことしてんだろうって思うくらい、とにかく忙しかった。
日曜日だけ昼営業を休ませてもらったが、気付いたらもう８連勤していた。
「よっ、元気？」
「あっ、潤くん」
相変わらずステージで準備をしていると、Tシャツ姿の潤くんが声をかけてきた。
「ひょっとしてヘルプ？」
「そう。こっちの店人いないのにイベントやりすぎじゃない？智大丈夫なの？」
「うん…ちょっと眠いかな」
「いやお前のシフトやばかったよ。８月休みゼロじゃん」
「でもフル出勤じゃない日もあるし。終わったら夏休みだし」
「いやいや…」
さして気にしていない俺に、彼は呆れ顔だった。
まだ何か言おうとしていたが、袖からケースを転がす音が聞こえ、二人してそちらを向いた。
「おはよう、智。元気？」
「カズ！」
俺たちはすっかり仲良くなっていた。
LINEも適度に交わしていて、昨日も明日よろしくねってやり取りしたばかり。
次仕事で会うのが楽しみになっていたくらいだ。
「今日早いじゃん。もう終わったの？」
「うん、さすがに毎日やってれば慣れるよ。ドラム組むのもめっちゃ早くなったんだよ！こないだねー、チューニングの仕方も教わったの」
「もう楽器屋じゃん。俺んとこで働けば？」
「無理だよ、楽器できないし」
会話しながらアンプをセットしていると、店長がステージに登って潤くんの横に立った。
「ずいぶん仲良くなったんだねぇ。いいことだ。潤も追い越されないようにしないと」
「はっ？なんで俺が…」
「智くんはモテるからね〜。しかもイケメンに！羨ましいなぁ〜」
「店長、やめてよ！」
冷やかしに来たのか、ニコニコしながらまた降りて客席に戻っていった。
カズを見ると、真剣にアンプからギターの音を出している。
俺はしばらく何を思うことなくその姿を見ていたが、ハッと我に返り袖へとはけようとする。
潤くんは追いかけるように俺の肩を掴んだ。
「智、お前…」
「ごめん、リハーサルしなきゃ！潤くんまた後でね！！」
彼の呼び止める声にも気付かず、また忙しい時間が始まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京(プロフ) - 富喜田さん» そう言ってくださって嬉しいです！がんばります！！ (2020年7月12日 18時) (
レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
富喜田 - 何度もすいません。 すごく心に突き刺さりました。 大好きです！ (2020年7月10日 17時) (レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - 富喜田さん» はい、ありがとうございます！！ (2020年7月10日 1時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
富喜田 - 面白かったです！ これからの進展楽しみにしてます。 頑張ってください。 (2020年7月8日 6時) (レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京
| 作成日時：2020年7月7日 17時
