４４ ページ44
「僕、彼女はいないけど、ちゃんとした恋人ならいますよ」
彼の言葉に一斉にみんなの視線がそちらへ向けられる。
俺は突然の言葉に目を見開いた。
「僕、智くんが好きなんです」
しーんと静まり返る食卓。
母親たちは顔を見合わせ、父親たちはぽかーんと口を開けている。
俺の心臓はバクバクと激しく音を立てていた。
「えっ、好きってどういう…」
「智くんが好きなんです。心の底から。愛してるんです」
カッと顔が熱くなった。
ド直球すぎる彼からの告白に、母ちゃんは「あらまあ、」なんて口にてを当てている。
「翔、どういうことか説明しなさい」
「ずっと隠してたけど、恋人同士なんです、俺たち」
「こ、恋人って…二人は男の子じゃ…」
「男同士で悪いですか？俺たちは愛し合ってるんです」
翔くんの真剣な表情にみんなたじろいでいた。
明らかに動揺した様子の双方の両親。
いったい何を言われるのだろうか。
彼もきっと、罵られる覚悟でその発言をしたはず。
このまま引き裂かれるなら、いっそのこと駆け落ちでもしたほうがいいのかもしれない。
そのくらい、俺たちの想いは強かった。
しかし、しばらくして唖然としていた母ちゃんが、急にくすっと笑い出した。
「やだ、翔くんってすっごく正直なのねぇ。かわいいわぁ」
「まさかこの場でカミングアウトするなんて。私たちも予想つかなかったわよ」
あはは、と笑い合う母親同士。
父親は気まずそうに腕を組んで見ている。
さすがの俺たちもこの状況が読み取れない。
すると、今度は父ちゃんが口を開いた。
「毎晩下の玄関の前でしていること、残念ながらみんな知ってるぞ」
…えっ？
ひとりひとりの顔を確認していく。
みんな驚くどころか、なぜ今そんな話をするのかという笑ってるような、呆れたようなそんな表情だった。
これにはさすがの翔くんも驚いて大きな目をさらに大きくしている。
「智、アメリカに行きたくないのは翔くんといたいからでしょう？」
「っ、な、なんでそれを…」
「人目も憚らず抱き合ったりしてるんだもの。気付かないわけないわよ」
み、見られてたの…！？
ってことは、父ちゃんも母ちゃんも、翔くんのご両親も、弟ですら、みんな知っていたっていうのと？
俺たちが夏からずっと付き合っていることを、知ってて黙っていたってこと！？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
富喜田 - めっちゃよかったです。 本当に1日の楽しみです！ 大学生編頑張ってください。 この話に出てくる大野さん すごくタイフです。 (2020年7月7日 17時) (
レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
富喜田 - 大学生編！？ めっちゃ楽しみです！ いつまでも待ってます!!! (2020年7月7日 6時) (レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - 富喜田さん» 富喜田さん、ありがとうございます！！まだ大学生編と続くのでぜひ楽しみにしていてください！ (2020年7月6日 22時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
富喜田 - 本当に最高です！ 続きがとっても楽しみです！ 頑張ってください。 応援しています!! (2020年7月6日 17時) (レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - 猫さん» 猫さん、ありがとうございます。頑張る糧にいたします！ (2020年6月25日 0時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京
| 作成日時：2020年6月22日 0時
