じゅうさん ページ13
大きめのテレビでは今にも崩れそうな
廃ホテルが映っているけど
そんなことどうでもいい
Aさんが俺にぎゅうぎゅうと
くっついてくるんだから
もう心臓破裂しそう
平然を装って画面を見続ける
多分Aさんを見たら押し倒しかねない
理性を保つことに集中していたら
いつの間にか映画は終わってた
モトキ「Aさん、終わったよ?」
貴「…やっぱり、映像がつくと怖いね」
そう言って苦笑いをした
よく聞いてみると
以前に本を読んだらしくて
意外と面白かったから
映画もイケると思ったんだけど
ムリだったらしい
貴「1人で見なくてよかった」
恥ずかしそうに笑うAさんを見ていたら
不意に目が合ってお互いに口を閉ざす
少しだけ沈黙が続いて
引き寄せられるように唇が重なった
何度目のキスだろう
いい香りがして柔らかくて
全然慣れない
一度唇が離れたけど
すぐにその感覚を求める
そんなことを何度か繰り返すうちに
スイッチが入ってしまって
Aさんの服に手をかけた
貴「もっ、モトキくん?何するの?」
真っ赤になった顔でそう問われて
えっ、と間抜けな声が漏れた
不思議そうな顔をするAさんは
ふざけているようには見えない
恋人がいたことはないと聞いていたから
初めてだということは分かっていた
もしかして…
モトキ「知らない…?」
そんな考えが浮かんで思わず声に出た
貴「な、何を?」
首を傾げるAさんに笑いかけて
モトキ「ごめん、何でもないよ?驚かせちゃったね」
へらっと笑って
Aさんから離れた
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作者名:鳴海 帆南 | 作成日時:2020年2月6日 21時