27.あの夜の出来事 ページ26
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電車が左の方向に動いて行った。
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ガヤガヤとした車内に、吊るされてる広告は私がどっちかというと好きなアイドルグループ。
…不思議だ。
同じ電車なのに、智くんと乗るとこうも違う。
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安心、出来る。
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ちらり…と右目を動かして様子を伺うと、智くんはさっき私が返したマフラーを首に巻いていて。
ふわぁーぁ…って眠そうに大きな欠伸をして、目尻をゴシゴシと擦ったり。
ポリポリ、とこめかみを掻く手は実はゴツゴツしてて私の手と比べるとビックリするぐらい大きい。
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窓の外はあり得ないぐらいのスピードで動いて行ってて、あぁこんなもんだっけか。と。
世界ってこんなに早く動くもんだっけか。と。
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ーーー…和也『そんなに無理しなくていいよ。』
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あぁ、消し去りたい。今すぐ。
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「…智くん？」
智「んぁ？」
「あのね。…この前、マフラー貸してもらった日ね。私多分嫌われちゃったんだ」
智「話が唐突すぎてついていけねーぞ」
「最初はすっごい楽しかったんだ。…智くんが言ったようにこのマフラーだって買ってもらったの」
智「ふむ」
「問題は、その後」
智「なんかされた？」
「私、間違えた」
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「間違えたんだぁ…」
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ーーー…和也『この後時間ある？』
マフラーを貰って、二人で肩を並べて車に戻って発せられた第一声はこれだった。
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スマホの画面を明るくすると、時間的にまだ全然余裕で『はい』ってふたつ返事で返した。
別に無理なんかしてなくって。ただ、まだこの魔法のような幸せな時間が終わってほしくなくって。
今だけは、私だけの二宮さんのようなそんな馬鹿な錯覚に陥ったりしちゃって。
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本当は今日、早く帰ってきてね。ってお母さんに言われてることなんて都合のいいように忘れたふり。
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ーーー…でも、それが凶と出た。
ちょくちょくお母さんからやってくる連絡。その度に煩わしく無視し続けてた。
アクセルを踏む二宮さんの足元。ハンドルを回す、二宮さんの腕。
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和也『ーーー…家まで送るから教えて。道』
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想像していなかった言葉を紡いだ、くちびる。
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二宮さんがカーナビを操作し始めた。
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28.9年先に生まれただけ、9年後に生まれただけ。→←26.ハツタイケン
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