週末だけの恋。 (ページ9)

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『…A』

フルネームは怖いから教えたくなくて、名前だけ答える。

宮近「Aちゃん？可愛いね」

怖いのに、顔がかっこいいってズルい。

宮近「Aちゃんって幾つ？」

『…徐々に相手のこと知っていく方が、面白いですよ』

宮近「俺のパクんなよ(笑)」

『そんなこと言ってる宮近さんは、お幾つなんですか？』

宮近「今年26になる」

『へぇ』

海人くんと同い年だ。

やっぱり、私の事おねーさんとか呼んでるけど、私よりも歳上なんじゃん。

宮近「俺が答えたんだから、Aちゃんも年齢教えてよ」

『宮近さんの2個下です』

さっきから宮近さんの話のペースにのまれてる。

このままじゃ、なんとなくマズイ気がする。

宮近「俺の事、怖いんじゃないの？」

『怖いですよ』

宮近「逃げないの？」

『メロンパン、食べてるので』

宮近「そんなんじゃ悪い人に捕まっちゃうよ」

もう捕まってるなんて言ったら怒られるかな。

メロンパンを食べ終えて、クッキーはカバンの中にしまう。

帰ろうとして荷物をまとめたら、隣に座っている宮近さんはライターとタバコを取り出した。

宮近「いい？」

『どうぞ。私は帰りますけど』

宮近「何のために許可取ったと思ってんの？返事したならもう少し居ろよ」

また嵌められた。

宮近さんの目ヂカラが強くて断れない。

…この人、きっとそれをわかってる。

言い返すのをやめて宮近さんが喫煙してる姿を見つめる。

宮近「なに？」

『別に』

宮近「吸う？」

『結構です』

宮近さんの口から煙が吹かれる。

宮近「どうしたらその強すぎる警戒心解いてくれんの？」

『宮近さんの素性が全て分かったら』

宮近「じゃあこうしよう」

『また何か条件ですか？』

宮近「Aちゃんの毎週金曜日の夜、俺に頂戴？」

『嫌です』

宮近「メシ奢る」

『嫌です』

宮近「愚痴だって聞いてあげる」

『嫌です』

宮近「嫌ですしか言えなくなったの？」

『宮近さんのお誘いは全部お断りします』

宮近「Aちゃんって、喧嘩した時の俺の妹にそっくりだね」

『…宮近さん、嫌い』

…妹って、また言われた。

妹ってなに？我儘ってこと？幼稚ってこと？

海人くんを思い出すからそんな事言わないでよ

なんて、私の事情を知らないであろう宮近さんには言えないけど。