週末だけの恋。 (ページ8)

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翌週の金曜日、約束通り仕事帰りに公園に寄る。

元太くんには、何かあったら電話するかもしれないと一言だけ告げて会社を出てきた。

怖いから、今日はお酒を買わなかった。

…なんで私、素直にここに来てるんだろう。

元太くんにこの話をしたら馬鹿だって怒られるかな。

「ちゃんと来てくれたんだ」

『来いって言ったのはそちらですよね』

「普通、不審者だと思った人との約束なんてばっくれるだろ」

ベンチに座った私を見下すように話してきたカイトという人は、また私の隣に腰掛けると、紙袋を渡してきた。

「はい、メロンパンとクッキー。」

『本当に買ってきたんですね』

「そりゃあ約束だからね」

『平日に行列に並ぶって、暇なんですか？』

「まぁ有給消化的な？午前休もらって買いに行った」

『へぇ』

…ほんと、変な人。

「食べないなら俺がもらうけど？」

『食べます』

「どーぞ。」

まって。

開けたのはいいけど、これ変なもの入ってないよね？

本物だよね？

食べても大丈夫なやつ、だよね…？

急に不安になってカイトって人の顔を見る。

「なに？」

『…本当に買ってきたんですよね？』

「レシート、見る？」

『何も、混ぜたりしてないですか？』

「おねーさんって人間不信？」

『違いますけど、あなたは怖いから』

「じゃあ俺にひと口頂戴？毒味してあげるから」

私の手にある紙袋の中からメロンパンを少し摘んでちぎって食べる。

「美味いから早く食いなよ。じゃないとカラスに食われるよ」

『夜なのでカラスなんて居ないです』

いただきますを言ってひと口頬張ると、口の中いっぱいに広がるバターの香りと甘い味。

…美味しい。

「ねぇ」

『なんですか？』

「俺も、食べちゃうかもよ」

惹き込まれる、光のない目。

『…何を、ですか』

「さぁ」

なんなの、この人。

『フルネーム、教えてください』

「なに、俺のこと通報する？」

『なんて呼べばいいか分からないから』

「そういうこと？俺は宮近海斗。カイトって字は大海原とかの海に北斗七星の斗。」

へぇ、海人くんとは違う漢字なんだ。

宮近「おねーさんは？」

『教えません』

宮近「メロンパン、食ったよね？」

脅し文句のようにメロンパンを使ってくる宮近さん。

このメロンパン、こういう時のための餌付け？

やっぱり食べるんじゃなかった。