週末だけの恋。 (ページ6)

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隣に勢いよく腰掛けてきたのは、あの時のフープピアスを付けた猫背の男。

『…なんでいるんですか』

「また来るって言ったでしょ？」

『別に来なくていいです』

ずっと地面を見つめながら話す。

「ねぇ、いつになったら俺と目合わせてくれんの？」

『怖いから目なんて合わせたくありません』

「俺、怖がられてんの？」

『当たり前です。知り合いでもないのに私の行動を知ってるなんて気持ち悪いです』

「おねーさん、結構言うね」

『帰ってください』

「嫌だね」

『帰って』

「おねーさんが俺と目合わせてくれたら、今日は帰るよ。その代わり、また来週も変わらずここに飲みに来て？」

『両方とも私にメリットがないので嫌です』

私が断り続けてもめげないカイトって人。

面倒くさいから早く諦めて帰ってよ。

私、今日はこの場所で飲みたい気分だから。

「んー…じゃあ、メロンパン」

『え？』

「来週あの行列ができるメロンパン屋さんで買ってきてあげるから、ここ来てよ」

…なんでこの人、ピンポイントにメロンパンなんて言ってくるの？

私はメロンパンが大好きで、お昼は少なくとも週3は食べている。

そんなの知ってるなんて、気持ち悪い。

たまたまかもしれないけど、怖い。

「それでも嫌なら、そのお店で売ってるメロンパンクッキーも買ってきてあげる」

…この人、本当に危ない人かもしれない。

目を合わせたら今日は帰ってくれるけど、来週はここに来なきゃいけなくて、私へのメリットは好物のメロンパンとクッキーがもらえること？

意味がわからないにも程があるよ。

小学生の頃によく聞いた

"知らない人について行っちゃいけません"

"知らない人から食べ物をもらって食べちゃいけません"

そんな言葉がよぎる。

どうしよう、元太くんに電話する？

隣にいるのに電話なんてして大丈夫かな？

こういう人には変な刺激を与えちゃいけないって聞いたことある。

今何をするのが正解なのかわからない。

私、何かされちゃうのかな。

この人が帰らないなら私が立ち去ればいいのに、なんだか怖くて、足が竦んで動けない。