週末だけの恋。 (ページ5)

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金曜日、上司に押し付けられた仕事を残業して終わらせてパソコンを閉じた頃にはもう外は暗くなっていた。

ビルから出てコンビニでお酒を買った。

後輩の松田元太、今日私を置いてさっさと帰ったの許さないから。

手伝いますか？って一言ぐらい声掛けて帰ってよ、ばーか。

海人くんと電話するわけじゃないのに、クセで公園まで歩いてきちゃった。

…折角来たし、ここで飲んで帰ろう。

いつもの公園、いつものベンチ。

変わったのは海人くんの声が電話越しに聞こえないことくらい。

それ以外変わったことなんてなくて、私だけポツンと取り残された気持ちになる。

プシュッと音を立てて缶を開けてお酒を飲む。

今頃海人くんは奥さんの手料理を美味しく食べているのかな。

奥さんが沸かしたお風呂に入って、奥さんが洗濯したパジャマに着替えて、奥さんと…

『あー、やってらんない…』

涙が流れてきた時、カバンの中で鳴る携帯。

画面には海人くんからの着信の文字。

思わず拒否ボタンを押しちゃった。

中村なぁ、本当にどうした?心配なんだけど

メッセージが来て、操作を間違えてトーク画面を開いてしまった。

向こうは既読が付いたことに気づいたのか、また着信画面に切り替わった。

『…もしもし』

中村「やっと出た。社内メールもLINEも返信なくて心配した」

『…ねぇ、海人くん』

中村「なに？」

『結婚、おめでと』

中村「あ、ありがとう。誰から聞いた？」

『上司が社内報で見つけた。なんで教えてくれなかったの？』

中村「だって知らせても気遣わせるだけだろ」

『…それでも私は、話してほしかったよ』

中村「ごめんな」

『あのね、海人くん。もう私と電話しちゃダメだよ』

中村「なんで？」

『彼女…、奥さん、誤解させちゃったら困るし』

中村「大丈夫、お前は妹みたいなもんだから。ウチのやつも許してくれるよ」

"ウチのやつ"

その言い方に、結婚した現実を突きつけられた。

それに、やっぱり私は"妹"なんだ。

『ダメ、もうやめよ。週末の電話』

中村「お前ストレスためない？ちゃんと本音で不満吐き出せる人いんの？」

『…大丈夫。今まで週末の貴重な時間を私にくれてありがとう。楽しかったよ。じゃあね、海人くん』

ツー、ツーと通話終了の音が鳴る。

…これでいいんだ。

相手は既婚者。私はただの同期。

「今の、いつもの電話の相手？」