週末だけの恋。 (ページ32)

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資料を手渡してデスクに戻ると、元太くんは何事もなかったように仕事をしていて

私の部署に配属された後輩が優しい元太くんで良かったなぁとつくづく思う。

お昼休み、いつも座っている休憩室の窓際の席でメロンパンを取り出す。

…そういえば、宮近さんはここに私がいると向こうのビルから見えるって言ってた。

気になって窓越しに探してみるけど、宮近さんらしき人は見つからなくて、こちらとはビルの階数がズレているから、少し上の階も確認してみる。

そこはみんなお盆を持って歩いていて、食堂みたいだったからもう少し探してみるけど

…なんだ、いないじゃん。

つまらないな、なんて思いながらメロンパンをひと口食べる。

食べながらまた少しだけ宮近さんの姿を探すけど、やっぱりいない。

そう思っていると、手を振っている人がひとり。

……あ、いた。

手を振っていたのは、宮近さんが酔った日に出会った松倉さんで、私が手を振り返すとなんだか口パクで話しながらジェスチャーを始める。

箸を口に持っていった後、お腹をポンポン叩いて、下を指さす。

"食、べ、終、わっ、た、ら、下！"

そう言っているように見えて

私も確認ためにメロンパンを食べる振りをしてから同じジェスチャーをすると、松倉さんは親指を立ててグッド！としてきた。

食べたらビル前集合ってことかな。

急いで食べなきゃ。

松倉「Aちゃん、急にごめんね」

『いえ、どうかしましたか？』

ビルの外に出ると、松倉さんは手のひらを合わせて謝ってきた。

松倉「前のお礼したいなと思ってこっち見ないかなーってずっと念送ってて！そしたら今日見てくれたので」

『お礼なんていいですよ』

松倉「しなきゃ俺の気が済まないの。ご飯ご馳走しようか思ったけど、それだとちゃかが怒りそうだし。何がいいかなって考えてました」

松倉さんはタメ口と敬語が入り交じった口調で、不思議な距離感。

『…じゃあ、宮近さんってどんな人か教えてください』

松倉「え、それだけ？ちゃかが怒らなさそうなことであれば教えることはできますけど、そんなのでいいんですか？」

『はい』

松倉「じゃあ今は時間も時間だし、もし良かったら連絡先交換しません？あ、でもこれじゃナンパみたい？どうしようかな…」

『ふふっ、良いですよ。交換しましょ？』

松倉「ありがとう！仕事終わったら連絡しますね！」

『はい。お待ちしてます』