週末だけの恋。 (ページ28)

今日:11 hit、昨日:14 hit、合計:224,468 hit

28 ページ28

.

連絡先は交換したものの、トーク画面は私があの時送ったスタンプひとつで

特に連絡が来ることもこちらからすることもなく、毎週金曜日は必ず公園で会っている。

別に交換しなくたってよかったのにって宮近さんに話をしたら"持ってることに意味があるんだよ"なんて言ってた。

会っても海人くんの話はせずに、今まで海人くんにしていたような仕事の愚痴を言ったりするだけ。

用事があるときは10分だけだったり、用事が何も無くて沢山話したい時は終電ギリギリまで一緒にいたり

逃げ方を考えておいてなんて言ってきた宮近さんは、今のところ何もしてこないし

何が楽しいのか分からないけど、隣でタバコを吸いながら私の話を聞いてくれる。

不審者から知り合いになった感じ。

知り合い以上、友達未満？

そんな関係性が一番近いかもしれない。

.

1ヶ月と数週間経って、夏の終わりが近づいた頃。

松田「Aさん、見ました？10月の人事異動」

隣のデスクから椅子のキャスターを転がして近づいてきた元太くん。

『あ、そっか。もうそんな時期でしたっけ』

松田「早く見た方がいいですよ」

社内メールを開いて、人事異動の一覧を見ると

"中村海人"の文字と、その隣には私が今いるビルの1階上の部署名。

松田「中村さん、上の階の部署に来るみたいですね」

確認した私の様子を、ニヤニヤして見つめてくる。

『そうですね』

松田「嬉しくないんですか？」

『別に、どうとも思わないです』

…嘘。

本当は嬉しいけど、それと同時に不安が付き纏う。

今は離れていたから社内メールもLINEも無視することが出来たけど、同じビルなら出くわす可能性だってあるし

…会っちゃったら、無視なんて出来ないし。

あの日のことは宮近さんにしか話していないからバレないとは思うけど、私が海人くんのこと忘れようとしてるのに、近くにいられると困る。

『…資料取りに書庫行ってきます』

全てを見透かすような目で見てきた元太くんから離れて、地下の書庫に向かった。