週末だけの恋。 (ページ11)

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翌週の金曜日、夜は雨だった。

天気予報で雨が降るなんて言っていなくて、傘を忘れた私はビルの入口で雨宿りをする。

少し経って止まなかったらそのまま濡れて帰ろう。

松田「傘、無いんですか？」

『忘れました』

松田「これ、お貸しますよ」

『でも、松田さんが濡れちゃうじゃないですか』

私にビニール傘を差し出したと思うと、今度はカバンから折り畳み傘を取り出した。

周りから会社の人が居なくなったのを確認したのか、元太くんは"Aが使って"と口調を変えてくる。

松田「俺さ、折り畳み傘も持ってんの。最強じゃね？だからそれ使っていいよ」

『じゃあ借りるね。ありがとう』

松田「じゃ、お疲れー」

真っ直ぐ駅まで歩いているけど、気がかりなことが浮かぶ。

宮近さん、本当に公園で私の事待ってるのかな。

雨足が強まってきて、大粒の雨が強く地面に落ちて弾かれる。

傘、持ってるのかな。

別に持ってなくても私には関係ないんだけど。

…でも、気になる。

駅前の通りまで来ていたけど、引き返して会社近くの公園に向かう。

いつものベンチにいる、後ろからでもわかるあの猫背姿。

『…風邪ひきますよ』

宮近「あ、来た」

傘をさす私を見上げる宮近さん。

お風呂上がりよりも濡れた髪。

スーツも色が変わっていて、ベンチだって雨でびちゃびちゃ。

『来たじゃなくて、風邪ひいちゃうので傘さしてください』

宮近「忘れたしいいやって思ったから」

『そこのコンビニで買えばよかったじゃないですか』

宮近「その間にAちゃんが来てたら困るでしょ？」

『私のことなんてどうでも良いですよ』

宮近「どうでも良くなんかないよ。ちゃんと会う約束してたんだから」

『私が来なかったらどうしてたんですか？』

宮近「来るまでずっと待ってたよ」

不審者みたいな人なのに、無駄に誠実。

なんとなく悪い人ではない気がするけど、やっぱりまだよく分からない。

『…そのベンチ、びちゃびちゃですよ』

宮近「お尻冷たいからわかってる」

『そんなにずぶ濡れでどうやって帰るんですか？』

宮近「いい場所知ってるから大丈夫。Aちゃんも来る？」

『いいです、帰ります』

宮近「俺傘ないのに助けてくれないの？」

傘を持っている手が、宮近さんの濡れた手に引っ張られて顔が近づく。

宮近「一緒に来てよ」