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しまった!またフィルターを通さずに!と思ったときにはもう後の祭り。





社員「どういう意味?」

あ「数字は嘘をつきません。誰がどのように数字を出したとしても、数値は変わりません。
  確かにこの予算では資金繰りが難しく、追いつかないと思います。
  でも、それは見積もり方とか、見積もった人が生み出した結果じゃない。
  この企画、ここまでの構想自体に問題があったと判断するべきだと思います」

社員「私たちが原因ってこと?」

あ「私たちも、原因のひとつだと思います」





声が震えた。


緊張していたからか、それとも気持ちが溢れたのか、わからないけれど。



とにかく、今のままではダメだ、違う方向に行ってしまう、と思った。






菊「じゃあAちゃんは、具体的にどうしていくべきだと思う?」






菊池さんは、いつもの優しい声で、私にチャンスをくれた。






あ「大幅に、企画を見直す必要があると思います」







会議室がザワザワした。


配信予定日まであと少しなのに、って。もうスケジュールも組んだのに、って。

そういうことじゃないのに。





このゲームを待っている人は、何万といる。

今の企画で行けば、大きな利益になると思う。



でも、私たちは会社を守らなければならない。

これからも私たちが世の中に新しいものを発信していくためには、この会社を守らなければいけない。


目先の利益だけに捕らわれていないか。本質を見誤っていないか。









中「ちょっといいか」







社長の一言で、ザワついていた会議室は一気に静まった。






中「星野の意見、俺は尤もだと思う。
  今回、前作がヒットしたことで俺らも力んでたところがあった。
  時間には限りがある。もう一度、見直そう」





先輩社員たちは真剣な目で社長を見、頷く。







堂々巡りだった会議は、一歩ずつ前進し始めた。









社長が私なんかの意見を聞いてくれたことはもちろん嬉しかったけれど、




そんなことよりも、








働き始めてまだちょっとなのに、私の名前を覚えてくれていたことに、びっくりした。

そして、嬉しかった。









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作者名:リンゴ | 作成日時:2017年4月19日 18時

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