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「ゆみぃ！しょーちゃ、いきゅ」
潤くんが満面の笑みで翔ちゃんを
ぎゅーっと引っ張る。
精一杯なんだろうけど
海に見惚れて心あらずの翔ちゃんには
力が弱すぎて気づかれてないよ。
数秒間の沈黙のあと
翔ちゃんがはっと我に返った。
「じ、潤、行こっか」
「いきゅー！」
海に入るつもりはさらさらない俺は
お気に入りのクロワッサンを
ひとりもしゃもしゃ食べる。
目の前では潤に引っ張られた翔ちゃんが
頭から海に突っ込んでいる。
いてぇだろうな…とか思いつつ
次はチョココロネに手をつける。
ジーンズに隠れた足が
ずきずきと痛んでいる。
海といえど砂浜は一部分だけで
他は切り立った崖に覆われている。
一枚、ひらひらと舞い落ちたのは
海の桜、海桜。
潮風がもろ当たるあの崖で
毎年毎年花を咲かせるしぶといやつだ。
外見こそ弱々しいが
世界一、美しいと思う。
パンをしまい、今年何度めかの
スケッチを始める。
潮風に舞う、海桜。
一本一本の細い線が肩を寄り添わせて
なんとか倒れずに足をつけている。
今日は、もうひとつ。
色褪せたスケッチブックをめくる。
大好きな海桜よりも
出会ったばかりの、あの子たちを
カンバスに焼き付けたい。
「智くん！」
描き終わった俺は
そのまま、眠っていたらしい。
髪がぎしぎしになっている。
夕日を浴びて
オレンジに染まる海を背景に
すやすや眠る潤くんを抱きかかえた
翔ちゃんが映し出される。
「帰ろっか」
片手に潤くんを炊き
片手を俺に向かってのばす。
一瞬躊躇して、その手を掴む。
ふわりと笑った横顔がリンクする。
視界の橋にピンク色がうつる。
オレンジには、映えないんだな。
蘇るのは鮮やかな橙色。
なんだかんだ引きずっているようだ。
"智なんて知らない"
オレンジを引き裂くような
冷たい、氷のような瞳。
また、足が痛む。
「肩、貸すよ」
とっさに空を見上げた。
ああ、俺んが背低いんだ。
無理やり口角をあげる。
お母さんと弟を支えて生きてきた。
自分のことはすべて後回しだった。
唯一の頼れる人だった
お父さんを事故で亡くした。
会社の恩恵にあずかり受けていた治療は
その死によって中断された。
母方の親戚の病院に余儀なく移され
彼らもまた、引っ越しを強要された。
どうして笑っていられるんだろう。
裏切られたことに偽りはないのに。
太陽は沈む。
ラッキーアイテム
革ベルト
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みみ(プロフ) - 磁石真紀さん» あ、まりおねっとの方ですね^^読ませていただいてます！コメントありがとうございました。 (2013年4月1日 21時) (携帯から) (
レス) id: 2546b2daa7 (このIDを非表示/違反報告)
磁石真紀(プロフ) - 面白いです!!次の更新楽しみにまってます(*´∀｀*) (2013年4月1日 14時) (レス) id: c0864cdfbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みみ | 作成日時：2013年3月22日 21時
