:４ ページ6
「しょーちゃ！」
幼児の朝は早い。
きりりとした目を輝かせて
俺の胸の辺りにしがみついている。
早起きは得意なはずだけど
さすがに潤にはかなわない。
まだ半開きの目をこすりながら
元気な甘えん坊を抱っこする。
「しょーちゃ、おおちゃいぅ…」
少し不安げに見上げてくる。
しがみつく力も強まった。
ああ、大野くんね。
見た目通り寝起きは悪いようだ。
あれから揺すっても名前を呼んでも
どうしても起きない大野くんに
匙を投げて俺も眠ってしまった。
筋の通った鼻がぴくぴくっと動く。
いや、人間、鼻って動かせんの？
「しょーちゃ、ごはん」
よっぽどお腹が空いているのか
少し涙目になって見上げてくる。
「はいはい」
ん、作れないよ？そりゃ。
そーいや前の学校の調理実習で
家族にクッキーを作ろうってので
みんなに酷評されたやつがあって。
家でもっかい作ったんだけど
小麦粉はぶちまけるし
卵はつぶしちゃうし
生地ひっくり返すし
挙げ句の果てに
やっと完成したくまさんを
叩き落として真っ二つ(笑)
それを見た潤の怯えきった顔が
どうも忘れらんないんだよな。
むしろ潤にはトラウマらしくて。
ほら、来た。
「おじゃいじょころはだめにょ…」
訳すと、お台所は駄目なの、ね。
分かってます分かってます。
前はお隣の圭子さんのとこで
お弁当と夜ご飯を毎日買ってた。
お弁当屋さんだったの、圭子さん。
え、朝ご飯？パンだよ。
父さんがお金持ちでほんと良かった。
死んだから、言い方良くないけどね…。
台所に向かう俺を必死で止める潤を
どうにかなだめていると
んにゃあって変にかわいい声をあげて
大野くんがむくりと起き上がった。
「しょーちゃ、おはよお…」
目をこしこしこすって
ふにゃあってあくびをする。
おい、潤と同レベルだよ。
思わずいつもみたいに笑ってしまった。
「っは、あはははは！」
そんな俺をぼんやりと見つめると
大野くんはにまっと笑った。
なんだか幸せな気分になる笑顔。
母さんに、似ている。
「翔ちゃん、料理できんのぉ？」
とろんとした表情で聞いてくる。
返事をしようとした俺の口を押さえ
なぜだか潤が答える。
指つっこむのはやめて…。
「しょーちゃくましゃんこりょしゅ！」
いや、ころさねーよ。
俺の口には潤の小さな手が
思い切り入ってしまっている。
窒息するから。
出窓に覗く空。
本日は晴天なり。
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みみ(プロフ) - 磁石真紀さん» あ、まりおねっとの方ですね^^読ませていただいてます！コメントありがとうございました。 (2013年4月1日 21時) (携帯から) (
レス) id: 2546b2daa7 (このIDを非表示/違反報告)
磁石真紀(プロフ) - 面白いです!!次の更新楽しみにまってます(*´∀｀*) (2013年4月1日 14時) (レス) id: c0864cdfbb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みみ | 作成日時：2013年3月22日 21時
