知らないくせに･･･。 ２１ ページ4
フンと息を吐き、目を細めて笑う。
僕の足は、暖かい空気にでも包まれているような感覚だった。
「あいつの足は、よく働いてくれた。」
「･･眞王がよく迷子になるからじゃん･･」
「あぁ、俺の責任でもあるな。だが、本当によく動いていたと思う」
「そうだよ。責任とってよ･･･」
褒めてくれる言葉がホっとして、
思わず自分の口元も緩んでしまいそうになる。
僕はだらしない顔を必死に隠すために、汚れた服で顔を覆った。
「あれだけ良く動いていたのに、変に筋肉がつかない、不思議な足だったな。」
「フォンカーベルニコフ卿に会ったら、軟弱なっ、って言われちゃうよ･･」
「でも、それがよかったんだぞ？」
「････」
「どんな美女でも、どこか足りない所はあった。だが、お前は少々性格に難があるだけで、他は完璧だったろう」
「正確に難があるって失礼だし･･･。っていうか、女と男を比べる事自体間違ってるし･･･」
「髪だって瞳だって、沢山の物を見た。濃い緑、金、青、赤、オレンジ、紫････。だが俺は、この色意外は美しいとは思わなかったな」
「･･･口説き文句じゃん･･ソレ････」
「口説こうとは思っていない」
「思われたら困るし･･･」
眞王の指に触れる僕の髪は、くすぐったそうにフワフワと揺れる。
自分の服にうずめた顔を上げず、ボソリと呟くと
眞王は僕の頬を親指で撫でた。
「俺が認めた国一番･･･、いや、世界で一番美しい色。」
「しんお････」
「俺はこの色が好きだ」
「･･･バカじゃん･･･」
「バカで何が悪い？」
「開き直らないでよ････。渋谷じゃあるまいし･･･」
こんなにも思われていたなんて知らなかった。
何だか妙に嬉しくて、目の前の存在に安心して
汚れた頬を撫でるように熱い涙がまた流れた。
「お前がそんなに泣き虫だとは知らなかったな。」
「ちがうしっ･･･」
「じゃあ、何故泣くんだ」
「････自分で気がついてよ･･･」
「･･･？」
膝を抱える腕に力をこめ、さっきよりも顔を深く埋めて
呟くようにボソリと口をあけた。
「･･･ッれしかったんだよ･･･」
「･･は？」
「だから･･、その･･初代のことを言ってるんだけど、自分のことみたいに･･嬉しかったんだ･･･」
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作者名：響 | 作成日時：2012年5月22日 22時
