本日はアニシナ日和です。せかんど! １１ ページ19
「ユーリ、涙が付いているぞ」
人差し指で涙をすくうと、ヴォルフラムの人差し指には小さな水滴が付いた。
その水滴は風に吹かれ、指をすべるように落ちてゆく。
ポタリと、水滴は真っ白な布団の上に落ち、消えていった。
神に祝される天使のように。
「お前は、羽が生えているみたいだな。」
「はねー？ユーリにはねないよー？」
「そうじゃない。羽があるみたいに、掴めそうで掴めないんだ。すり抜けてしまって･･･」
「うー？」
「その羽で、危険な所にも勝手に入っていってしまう。･･･僕は、心配なんだ･･･」
眉を下げ、エメラルドグリーンの瞳を歪めながら、寂しそうに呟く。
元のユーリと変わらないくらいの体で、力強く小さなユーリを閉じ込めた。
相変わらずあまり理解できていないユーリは、不思議そうに見上げるばかりだった。
「僕はお前に辛い思いをしてほしくないし、もちろん傷なんて許したくない。･･･だが、そうやって僕が決めてしまうことは出来ないし、お前は望まないだろう･･？」
「ぼぅふー･･？」
「できる事ならば、お前を城に閉じ込めて、危険とは無縁の世界で生きてほしい。僕たちがどうなろうと･･･」
「だめ!!」
ユーリは眉を吊り上げて、叫ぶように言った。
ヴォルフラムの目はビー玉みたいに真ん丸だ。
「ぼぅふたちがあぶないの、だめ!」
「だが、僕たちはそういう汚れの立場にいるものだ。」
「だめなの!!」
縛り目が緩みそうなほど頭を横に振る。
漆黒の大きな瞳は、ヴォルフラムの歪んだ瞳をしっかりと捕らえていた。
「ゆーりは『おーさま』でしょ？おーさまは、ぼぅふたちをまもるのがおしごとだよ!!ぼぅふたちがいたいの･･･、ユーリ･･やだよぉっ･･･」
「ユーリ･･･」
「ゆーりがいっぱいちからつかって、ぼぅふたちがにこにこしてるなら、ゆーりはやるよ!しんじゃってもいいよ!!!」
「それはダメだ!!」
「やだやだやだ!!ぼぅふたちがいないのに、ゆーり、いきてたくないよ!!」
精神も子供に戻したが、ユーリはユーリのようだ。
彼がヴォルフラムたちを命がけで守りたいと思う気持ちは
どんな姿であろうと、健全だ。
頑固で自分の意見を突き通すところも、正義感が強い所も
やっぱりユーリなんだな、と感じる。
「ゆーりはみんなといっしょだよ。ぼぅふとぐえんとあにしなと、よじゃっくとこんらっども･･みんなみんな、いっしょだよ!!」
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作者名：響 | 作成日時：2012年5月22日 22時
