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思考が余計な事を巡らせているうちに、不満そうな顔が目と鼻の先にあって、思わず身を引いた。
いくら女の子同士でも、歳上で、しかも端麗で無駄の無い顔が至近距離にあれば誰でも慄いてしまうだろう。
何より自分自身可愛い顔が好きなもんで。
よろけたせいで椅子に尻餅を着いてしまう。背中が椅子の背凭れにぶつかって少し痛い。
「もうっ、ボーっとしてたわよ!私、ずっと見つめてたのにっ。」
ぷっくりと膨れた頬を人差し指で差すと、空気が解放される。耐え切れなかった私の笑い声に、更に不満気な顰め面をする蜜璃先輩。
ううん、そこまで拗ねることだろうか…。
疑念を抱きつつも、いつもの先輩の不思議な考えなのだろうと割り切って、謝罪を述べた。
「先輩のポニーテール、新鮮で可愛かったなって考えてたんですよ〜。」
「え…。っそ、そんな嘘、騙されないんだから!」
「嘘じゃないですってぇ〜。」
少しだけ乱れていた前髪を整えながら否定する。
まったく。不貞腐れてる癖に顔をガン見してくるのはなんなんだろうかね。まったくだ。
口角が引き攣りそうになるのを堪えて、先輩に結んだ片方の三つ編み束を肩前に出した。
「でもこの髪型が一番可愛いですね、蜜璃先輩は!」
そう微笑むと、何秒か瞬きをして、それから勢い良く抱き着いてきた。
先輩は嬉しかったり照れたり、悔しかったり寂しかったりすると、感情のままに抱き着くので、変な輩に捕まらないか心配である。
つい数秒前まで不機嫌だったのに、忙しい人だ。
あと、背中に刺さる痛い視線をどうにかして欲しい。
「おはようA!甘露寺もおはよう!」
「おはようございます、煉獄先生。」
「あ…おはようございますっ。」
廊下を通りかかった煉獄先生が、一番後ろの廊下側の席で抱き合う私達を見兼ねて気迫のある挨拶をしてきた。
恥ずかしそうに体を離す蜜璃先輩。
温もりが消えて少々名残惜しい気もするが、流石に先生の前でずっと抱擁するのも気が引けるものだ。
相変わらず瞳孔の開いた大きな目と視線が交じる。ふと、思い出した様に先生がああそういえば、と声を漏らした。
「A、歴史の課題まだ出してないだろう。期限は先週の金曜までだが。」
「…忘れてた。」
耳を塞ぎたくなる言葉に白目を剥きそうだった。
「では、今日中に提出するんだぞ!」
「え、早!」
「金曜日までという期限が前からあったんだ。寧ろ遅いと思う。放課後までに出さなかったら罰則だ!」
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作者名:さらだまん | 作成日時:2019年12月11日 20時