Forty-one ページ43
聞き覚えがありすぎるその声に、記憶細胞は閉ざしていたドアを自ら開いた｡
そこにいたのは｡
「記憶さんが長い髪の女性がお好みみたいだから、せっかく切らずに伸ばしてたのに｡損しちゃった」
記憶細胞は自分の息が止まったような気がした｡
ようやく言えた言葉が
「……見違えたな」
で、それ対する返事は
「普通そういうこと言います? 」
だった｡
まあ、記憶さんらしいですけど｡
そう言って笑う彼女はAに違いなかった｡
「どうやって、ここに」
「案内してもらったんです｡その途中で色々あって……こんな格好な訳です」
気づけばB細胞はいなくなっていて｡
2人だけの空間が完全にできあがっていた｡
「……何で来てくれなかったんですか」
記憶細胞は黙りこんでしまった｡
「私、ずっと待ってたのに」
「……ごめん」
ようやく絞り出されたその声は震えていた｡
会いにいけなかった理由が情けなくて、とてもじゃないが言えるはずもなかった｡
フラれるのが、Aに拒絶されてしまうのが怖かった、だなんて｡女々しいにも程がある｡
｢記憶さん｣
Aの声で記憶細胞はいつの間にか下げていた頭を上げ、彼女を見つめた｡
｢私、やっと分かったんです｡記憶さんのことが好きなんだって｡もし記憶さんの気持ちに変わりがないなら、私と付き合ってくれませんか? 」
Aの笑顔はどこかぎこちなくて、スカートを握りしめる手も小さく震えていた｡
……本当にAには敵わない｡
いつか考えたことをまた浮かべるなんて思いもしなかった｡
記憶細胞にとって答えは1つだけ｡
「よろしくお願いします」
飛びつくように抱きついてきたAをしっかりと抱きとめて、記憶細胞は幸せを噛みしめた｡
同じ想いを抱いていたにも関わらず、離ればなれになることを恐れてなかなか踏み出せなかった記憶細胞とA｡
しかしこれからは今まで以上に互いの大切さを感じながら、共に歩んでいくことだろう｡
「記憶さん、大好きです」
うっすら涙を浮かべて笑うAにときめきながら、記憶細胞は｡
「俺も大好きだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年3月8日 17時
