Two ページ3
しばらく見つめあった2人であったが、先に口を開いたのはまたもや一般細胞だった｡
「聞こえてますか……? 」
その声にハッとした記憶細胞は慌ててその問いに答えた｡
「ああ、聞こえてる｡悪いね、大丈夫だ｡君は? 」
「私?私は見ての通り細胞ですけど」
ほら、と言って着ているシャツを見せた｡そこには確かに『細胞』の文字が記されている｡
「あなたは……」
一般細胞は頭に?を浮かべていた｡どうやら記憶細胞のことを知らないようだ｡
「俺は記憶細胞だ｡よろしく」
「記憶細胞、さん｡……よし、覚えました」
じっと記憶細胞の姿を眺めてから、ニコニコと笑ってそう言った｡
「ところで、さっき世界の終わりとかなんとか言ってましたけど」
「あれは、」
「記憶さーん! 」
記憶細胞の言葉を遮って、青いキャップをかぶった男が向こうから走ってきた｡
彼はB細胞｡抗体を作って抗原に対抗している｡
「もう探しましたよ、記憶さん!抗原が出たんですから、早く仕事してください! 」
「抗原? 」
聞き慣れない単語に首を傾げる一般細胞に、記憶細胞が答えた｡
「抗原っていうのは細菌とかウイルスのことだ」
「え、やだ、ウイルス!? 」
顔をおもいっきり青ざめた一般細胞の様子に、今度は記憶細胞が疑問を抱いた時のことだった｡
「もう!のんきに喋ってる暇があるんなら、とっとと現場行きますよ! 」
苛立ったB細胞が記憶細胞の首根っこをむんずと掴んだのである｡
律儀にもB細胞は一般細胞に軽く会釈をしてから、ずるずると記憶細胞を引きずって早足で歩き始めた｡
記憶細胞は
「ええええっ!? 」
だの
「ちょっB細胞君!?歩く、歩けるから! 」
だの驚きの声を上げつつ、引きずられていた｡
すると遠くから「記憶細胞さーん! 」と彼を呼ぶ声が聞こえた｡
その声の持ち主は先程まで話をしていた一般細胞であった｡
「また今度お話しましょうねー! 」
ベランダから大きく手を振る一般細胞の姿をしっかりと瞳に映し、記憶細胞も小さく手を振った｡
“また”という言葉に小さく期待しながら、B細胞からようやく離してもらえた記憶細胞は現場へと急いだ｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年3月8日 17時
