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週末にイドンヒョクは、また部屋にやってきた。
芸能人みたいにマスクとサングラスと帽子をして。突っ込んだら負けだと思ってスルーした。
「あ、俺が言った範囲ちゃんとやってきたんだ」
私の隣に座って参考書を覗き込む時は、
帽子を脱いで、サングラスを頭の上に載せて、マスクを鼻の下まで下げてる。
へーって言いながらページをめくる。
「私は受験に対して本気なの。あんたはただのバイトとしか思ってないだろうけど」
「よくやったA。その発言は見逃してやる。次は無いぞ」
「さっさと授業して」
「はいはい」
イドンヒョクは私の間違った問題だけじゃなくて、
正解した問題の解答も見ているみたいだった。
「基本はできてるけど基本止まりって感じ。公式は覚えたら終わりじゃないの」
ペンを持つ手元を覗き込んだ。
ロンジュンと同じ先生に字を習ったって聞いたけど、言われてみればロンジュンと同じ字を書くかもしれない。
「ロンジュンのことを考えてる？」
「…え？」
文字を書く動きは止まらない。
ふんって鼻で笑って言葉が続いた。
「実際ロンジュンとはどういう関係？」
「…クラスメイト」
突然なんだろう。
「友達ですらないのかよ」
「友達かは…分かんない」
何となく3年間同じクラスだっただけ。
相手が私に特別関心を向けてる気はしない。
「関係を発展させる予定は？」
「ねえ、あんたに関係なくない？」
「ロンジュニは俺のだから当然関係ある」
「数学とも関係ないし…」
数式を描く字だけは綺麗だ。
「なぁ、家庭教師だからって、数学に関する話しかしちゃいけないわけ？」
「当然でしょ。それ何書いてんの？」
「お前のための特別問題。まだ時間かかる。その間に次の範囲やっておいて」
「授業はしないの？」
「お前さ」
イドンヒョクは視線を少し上げて、私のテキストをぱらぱらめくった。
「うん。慌てて家庭教師雇わなきゃいけないほど絶望的な出来ってわけじゃないよ。でも、間違える問題にはある程度規則性があるでしょ、誰だって。それを俺が分析して、克服するための問題をいくつか出してやる」
「苦手な問題の解き方を教えてくれたりしないの」
「基本はできてるって言ったじゃん。コツはチャートでも何でも読み込んで取り込めばいい。それはお前の仕事」
そんなんで上手くいくかなぁ。
「上手くいくよ。数学は数をこなすことが一番大事なの。これ通説ね、持論じゃなくて」
どきっとした。何なのさっきから。エスパーなの。
とりあえず言われた通りノートを開いた時、イドンヒョクのスマホが鳴った。
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作者名：ユン | 作成日時：2021年9月28日 14時
