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結局私は言えなかった。
悩んだけど、ドヨンさんは本当に私に勉強を教えるのが嫌だったってことだし、
明朝テヨンから電話がかかってきたけど、ドヨンどうだったー？ってけろっとしてて、
本当にテヨンは何も知らないみたい。
テヨンに限って私をはめたりしない。
「あ…普通だよ」
『普通？そっか』
私はスニーカーに足を滑らせながら、テヨンの言葉に頷く。
「…でも」
『うんうん』
「テヨナ…ドヨンさんとの付き合い方は、ちょっと考えた方がいいかも」
私ちょっとがっかりしちゃった。
『…え？』
「もう切るね、学校行くから」
電話を切ってアウターのポケットに手と一緒に突っ込んだ。
打ち明けられないことなんてひとつも無い兄弟に、初めて嘘をついてしまった。
思えば私はこの時既に、
避けたと思っていたイドンヒョクの魔法に、かかっていた。
新学期が始まって数日。
私が教室に入った時には生徒の多くが集まっていて、
自分の机に鞄を置いたら、前の席の男子生徒が私に振り返った。
「Aお前、塾行ってたっけ？」
単刀直入に言葉が飛び出してくるのは、その事で頭がいっぱいだからかな。
「ロンジュニおはよ」
「おはよ」
「行ってないけど何で？」
私に顔を向けたまま、体の向きも変えるロンジュン。
「友達に誘われてさ、お前も行く？」
「塾はいいやー、うちこの間から家庭教師雇ったの」
「家庭教師？どこ大の人？」
「NCITの」
「へー、理系じゃん」
ロンジュンはそのまま手元の単語帳に視線を落として、ぼーっとしていた。
私は椅子を引いて席に座る。
「ロンジュン、あんたさ」
「んー？」
「イドンヒョク、知ってる？」
「イドンヒョク？」
はっ、って乾いた笑い。
「お前の口からあいつの名前かよ」
「何が面白いのよ」
「イドンヒョクなんて嫌いなタイプだと思ってた」
現に嫌いだけど。若干。
「どんな奴だか知ってる？あ…あんた友達？イドンヒョクって結構顔広いよね？うちのオッパがさ…」
「待って、一気に喋んないで。テヨンイヒョン？」
「テヨンとまで知り合いみたいなの…あいつ何者？」
「変な奴だよね」
いつも話す言葉に深みのあるロンジュンさん。
どんな時も私の欲しい言葉を選んでくれる。
「だっ…よねぇ…」
私は深いため息をついて、項垂れた。
「急にあいつみたいな奴のことが気になり始めたの？タイプ変わった？」
「イチミリも気になってない。聞いてみただけ」
「あーじゃあ、ドンヒョクの方がお前に気があるってこと？」
「無い。あんたの想像通り、私が生涯話さなそうな人」
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作者名：ユン | 作成日時：2021年9月28日 14時
