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「体育祭の練習で」
机の整理をしながら呟いた。
「ジュース差し入れしてた子は？」
「…え？」
「女の子。可愛い後輩？頼めば？」
席を立って部屋の扉を開ける。
いつまでも帰らないから先に部屋を出た。
「ち…違うってあの子はー」
その後をさささって追いかけてくるイドンヒョク。
「そういうのじゃないの。マジマジ」
「弁解しなくてもいいよ、他人に興味無いもん」
「A〜俺お前のためなら何でもするんだけどさぁ」
「じゃあさっさと帰って」
ソファに座って、玄関を指さす。
背もたれの後ろから身を乗り出してくるイドンヒョク。
「何で俺の事そんなに嫌いなの？」
「嫌いじゃないよ。関わりたくないだけ」
「Aって好きな奴居ないよね？」
か、確認する形なのはどうして。
失礼だな。他人に興味あるし。
「あんたもさ」
「俺？」
「うん。私に興味持とうとしなくていいよ。これ以上私からは搾り取れないと思って」
「俺が本当に金儲けのためにここまでしてると思ってるの？」
「じゃなかったら何か…引くよ」
「引くの？え？引くまで言う？」
そんなに嫌われてると思わなかった、って呟いてる。
「ねえ俺さ」
イドンヒョクは前の方に体重を傾けて、私の目線に近づく。
「けっこうAのこと好きなんだけど知ってた？」
「このタイミングで言うメンタル凄いね」
「2人きりだし悪くないタイミングじゃん」
「思い返してよ。これまで何か、私の好感度が上がるようなことしてきた？」
「お前はただ優しい男に惹かれる人間じゃない」
「私の何も知らないくせに…」
「じゃあもしかしてテヨンイヒョンみたいな人がタイプなの？」
イドンヒョクの目を見た。
ボール一個分の距離。
「その手には乗らない」
「あれれ。おかしいな」
イドンヒョクは体を起こして、すとんって地面に足を着く。
この人の思い通りの展開になるのだけは嫌だ。
「じゃあもう帰る。水曜の放課後迎えに来るから」
「もしかしてネカフェ行くの？」
「Aにもかなり利があるから安心して」
「勝手に話つけないでよ、行かないよ」
靴を履くイドンヒョクが、冷たいなーって呟いてる。
扉を開けて出ていく時に呼び止めた。
振り返った瞳が少しだけ大きく開いてる。
「気を付けて帰って」
「うんー」
イドンヒョクはさっと目を逸らして家を出て行った。
どうせ来るだろって言いたげな余裕っぷりが気に食わない。
でも私もさすがに学習してる。
彼は私がどうせ行く口実を既に用意してるはず。
私だってただ優しい男に惹かれたかった。
イドンヒョクが飽きるくらいに単純に。
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作者名：ユン | 作成日時：2021年9月28日 14時
