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「えっ…？私の家庭教師はなぜ…？」
「俺が仕事を横流ししてもらったの」
「なんでそんな事を？」
「お前マジで、ドヨンさんのことなんも知らないな！ヒョンはNCITの超優秀な特待生なの、今は私立の子達に勉強教えるのに忙しくて、お前にはもったいないの。お前には俺で十分なの」
ぼ、暴論すぎる。
その上に失礼すぎる。
「…そんなのおかしい…テヨンに確認する…」
自分のスマホに手を伸ばしたら、アッー！てまた大きな声で止められた。
「うるさっ」
「テヨンイヒョンにはお願いだから秘密にして…」
「やだ…」
「テヨンイヒョンシスコンで有名じゃん…お前のこと騙したって知られたら俺殺されるかも…」
「何言ってんの…」
じゃあ殺されてしまえ。
クラスの友達がイドンヒョクについて話してたのを、ふと思い出した。
女の子みたいなタレ目と、甘くてクセになる声がたまらなく可愛いって。
この人が？もしかしたらやっぱりそれ、イドンヒョクじゃないかも。
でもこの人が言う、テヨンとドヨンさんは関係ないって話が本当なら、テヨンを問い詰めても仕方ない。
「キムドヨンさんって性格悪いのかな？先輩からの仕事を横流しするなんて」
「ドヨンヒョンの悪口言うなっ」
「あんたが言ったんだよ」
まだ何か嘘ついてるみたい。当然だけど。
「家庭教師なんて誰でもいいじゃん。成績が上がれば。俺、けっこう成績悪くないんだけど知ってた？」
「そういう問題じゃないでしょ」
「どういう問題？お前ドヨンヒョンに気があったの？」
「はあ…？」
会話の主導権を取られそうで焦る。
「…とにかく」
「とにかく見逃して。報酬通りの仕事をするって約束するから」
「…どうして、家庭教師の仕事にこだわるの？」
受験生なのに。
何か事情が？
「気になる？」
頬杖をついたイドンヒョクが、
静かに口角を上げて、私を見ていた。
まずい。
「いや…別に」
慌てて目をそらす。
こういう相手は、ペースに乗せられたらおしまいだ。
「最初に言っただろ。訳ありだよ。大目に見て欲しいの。俺の弱みを握ったと思って」
「…は…？」
この人、どうかしてる。
「…私が何も言わなくてもいつかバレるよ…」
「お前さえ言わなかったら平気だよ」
イドンヒョクは、マスクを鼻まで上げて、帽子を被り直した。
鞄のチャックを閉めて私の目を見る。
「今日はひとまず帰る。俺が結果を出すかどうかを見届けてから判断して」
スマホを持って立ち上がった。
その目から目をそらす訳にはいかなかった。
「失望させないよ」
「…何なの」
何なの、に尽きる。
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作者名：ユン | 作成日時：2021年9月28日 14時
