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ジェノのジュースははあっという間に残り僅かになった。
「今飲み干すなら、私が瓶捨ててくるよ」
「ん、いいよ別に」
「いいの、通り道だから」
「A？俺に頼み事でもあるの？」
イジェノの大きな瞳が私をじーっと見つめる。楽しそう。
ないよーって笑ったらジェノも笑った。
私たちの小さな笑い声を遮る、イドンヒョクのハァーって声。
「仲良さそうにするならよそでやれよ」
「言われなくてももう帰るけど」
「A、イジェノはヤバいよ。マジでノジェムだし」
「自分が一番ノジェムのくせに」
フゥー！って高い声を出すイジェノとロンジュン。
ドンヒョクがこっちを睨んでる気がするから、頑なに目を合わせない。
「もう行くわ…ジェノ、瓶渡して」
「まだちょっと残ってる」
ジェノが瓶を掴んで、1センチの残りを見せてくれた。
ふふって笑って頷く。
体の向きを変えた時に、こっちに向かって走ってくる女子生徒とすれ違った。
何となく後ろを振り返る。
髪の長い女の子の背中。
その手に握られた1本のジュース瓶。
ドンヒョクオッパ、って声。
首を掻いてたイドンヒョクが顔を上げる。
あ、来たの？って動く口。
その瓶を受け取る手を一瞬凝視して、すぐ顔の向きを変えた。
何だかんだ、あいつが女の子と居るところを初めて見た。
噂で言う程では無いのか、隠すのがうまいのか。
教室に戻ったら、学級委員長に話しかけられた。
「Aさん、体育祭のエントリーシートは出した？」
「え？」
「女子の分は私が回収することになってるの。参加の欄に丸つけるだけ」
「あ…ごめん、忘れてた…今すぐ出すね」
急いで席に戻って、朝のプリントを確認する。
記入欄を埋めて慌てて委員長に出したら、委員長がその紙を受け取って、くすって笑った。
「付箋が付いたままだよ」
「…あ」
あのメッセージ。恥ずかしい。
急いで剥がして、これでいい？って聞いた。
「イドンヒョク君と友達なんだね」
「…え？」
「そんなメッセージ書いてくれるんでしょ？」
「…あぁ、これはイドンヒョクじゃなくてロンジュンが書いたの」
「え、そうなの？」
「そうだよ、だってロンジュンと同じ字…」
…同じ字。
あ。まさか。
「…今朝、もしかしてイドンヒョク来てた？」
恐る恐る聞いたら、委員長はうんって頷く。
「来てたよ。Aさんの席に座って、Aさんのこと待ってたみたい」
「…え？あ、いや、私の事待ってたわけじゃないよ。ロンジュンと話してたんだと思う」
「でもロンジュン君は今朝ずっと居眠りしてたし…」
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作者名：ユン | 作成日時：2021年9月28日 14時
