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マークの方に歩み寄った。
なんだか久しぶりに見る顔。
「久しぶりに見る顔だ」
同じことを考えてるマークが、小さく口を開く。
「顔を見たくなっても、何があっても、行かないことにしてたのに」
「…どうして来たの？」
「へチャニが、Aが可哀想だって泣いてた」
想像がつく。
自分で意気揚々と乗り込んできたのに、ついに何も分からなくなって泣きだす姿。
普段は大人びてるのに、こういう時は子どもみたい。
「…私が…ネガティブなことを呟いたから。動揺したみたい」
「辛い気持ちにさせないって約束したのに、へチャニの言う通りだなって思って」
「そんな約束したの？」
「会う度にいつもしてる。へチャニには君が一番なんだ」
外に足を放ったままこっちに体を向けてるマークが、私に手を伸ばす。
「俺にとっても、一番だよ」
その手をそっと掴んだ。
この人の優しさも、子どもの頃から変わらない。
「もう怒ってないの？」
マークは私を見つめて、ゆっくり頷く。
「私、酷いこと言ったのに…」
マークの隣に座った。
背中に冷たい風が吹き付けた。
マークが指で私の頬にそっと触れた。
「…元気にしてた？つらくなかった？」
「…」
「私は…つらかったから、聞くんだけど」
「初めて君のことを無視した」
マークは少し笑ってそう言った。
「Aが退院したあの日。俺たちは今まで喧嘩なんてしなかったのに。Aに背を向けて歩き出してから、すごく後悔して振り返ったけど、Aの車はもうなくて」
「…うん」
「何度も謝ろうと思ったけど、ジェヒョニたちと一緒に、何食わぬ顔でお見舞いに行ける自信が無い」
重ねた手にもうひとつ、手が重なる。
「次会った時には、このままAを連れ出して、どこまでも逃げ出してしまいそうだった」
マークが笑った。
「Aの好きな研究も家族も放り出して、Aが俺しか見えないように」
「…マーク、私が好きなの？」
「好きだよ。夢中になってる。見舞いから帰ったヤンヤンが、Aは研究のことが頭に無くなってるって言ってた。それじゃあいつも俺の事を考えてる？って」
笑い声も久しぶりに聞く。
一緒に笑った。
「愛してるよ、A」
マークは目を細めた。
「だから、ごめん。酷いこと言って。それに、迎えに来るのが遅くなって」
…もし。
「永遠なんてないって、最初から分かってたとしても」
微笑んだ。
私の安らぎ。私の喜び。
「私はまた、同じ期待をしてしまうと思う」
あなたが私の目を見て、
好きだって言ってくれるその日が。
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作者名：ユン | 作成日時：2022年10月19日 8時
